声劇台本 based on 落語 「やかん」
【書き起こし人 註】
古典落語をベースにしていますが、あくまでも"声劇台本"として作成しています。
なるべく声劇として演りやすいように、元の落語に様々なアレンジを加えている場合があります。
アドリブ・口調変更・性別転換 等々OKです。
ご利用に際してのお願い等
<登場人物>
<配役>
ここから本編
八五郎:ご隠居さーん、こんちはー。 ご隠居:む?誰かと思えば、 八五郎:え? ご隠居:久しぶりだな 八五郎:なんスか さっきから グシャグシャ グシャグシャって。
ご隠居:何も踏んでなどおらん。
八五郎:え?あっし?
(八五郎、上がる) (ご隠居宅の座敷) 八五郎:いやぁ ご隠居、今日は いい ご隠居:む?貴様、いつから 八五郎:は? ご隠居:しかし今 貴様、今日は 八五郎:いや、んなもん、 ご隠居:だが この 八五郎:いやまぁ、そりゃそうスけど……
ご隠居:ならば、「今日は、"今のところ"、 八五郎:はぁ……、そりゃどうも すんませんねぇ。 ご隠居:まぁ良かろう。
八五郎:ああ どうも。
ご隠居:何? 八五郎:いえ、ですから けっこうな ご隠居:失礼だな。誰の腹が出ておるか。 八五郎:何 言ってんスか。お茶を ご隠居:何を言うておるか 八五郎:あ、デバナって言うんスか。 ご隠居:さよう。「 八五郎:何スか それ? ご隠居:安い番茶でも 八五郎:へえ、相変わらず ご隠居は 物知りっスねえ。
ご隠居:む? 八五郎:何って、茶ァ飲みながら食うもんスよ。
ご隠居:何を言うておるか。これだから 八五郎:あ、チャウケって言うんスか、なるほど。
ご隠居:待て待て。
八五郎:は?(折詰の中身を指して)
ご隠居:貴様は それを、 八五郎:当たり前じゃねえスか。 ご隠居:なぜ それが「 八五郎:なぜって……、見たまんまじゃねえスか。
ご隠居:間違っておる。 八五郎:間違ってんスか!? ご隠居:間違っておる。
八五郎:いや、思わねえスけど……。
ご隠居:そうではない。
八五郎: ご隠居: 八五郎:あーたしかに。ご隠居の説明のほうが 納得いきますねぇ。
ご隠居:何だ?その「月とスッポン」と言うのは。 八五郎:またスか?
ご隠居:何を言うておる。
八五郎:ああ、まぁ確かに。 ご隠居:それを言うなら、「月と 八五郎:シュボン?なんスか シュボンて? ご隠居: 八五郎:へえ、月とシュボンねぇ。
ご隠居:覚えた?
八五郎:当たり前じゃねえスか。
ご隠居:何だ、その「河童の屁」と言うのは。 八五郎:取るに足らねえ事だから、河童の屁っスよ。 ご隠居:ほう、河童の屁は、取るに足らないか。 八五郎:足りませんねぇ。 ご隠居: 八五郎:あるワケねえじゃねえスか。 ご隠居:では 取るに足らんかどうか 分からんだろう。 八五郎:そりゃそうスけど……。 ご隠居:「すかしても 音の するのは 河童の屁」 八五郎:なんスか それ? ご隠居:河童は水中に住んでおる。ゆえに、すかしっ 八五郎:ああ、なるほど。
ご隠居:別にどうもせん。 八五郎:どうもしないんスか! ご隠居:ともかく、取るに足らない事を「河童の屁」と言うのは間違っておる。 八五郎:じゃ 何て言えばいいんスか? ご隠居:「 八五郎:コッパのヒ?なんスか それ? ご隠居: 八五郎:なるほど、 ご隠居:おお、そうだな。
八五郎:そうなんスよ。
ご隠居:む?何と言った? 八五郎:ですから、 ご隠居:なんだそれは。 八五郎:え? ご隠居:それは 八五郎:え!? ご隠居:そうではない。
八五郎:カンオンさま? ご隠居:さよう。
八五郎:くゎんおんさま!?
ご隠居:いや、正しくは、「 八五郎:そんな ご隠居:さよう。これが正しい呼び名だ。
八五郎:そりゃもう!この ご隠居:どっちだ? 八五郎:え? ご隠居:いま 貴様は、「人が出たの出ねえの」と言った。
八五郎:いや、だから……、
ご隠居:さようか。
八五郎:出たの 出たの……?
ご隠居:そんなことはない。正しい意味が ちゃんと伝わって 八五郎:そうなんスよ。
ご隠居:いま何と言った? 八五郎:またスかぁ?
ご隠居:猫は足があるから 出て来ない事も無いだろう。
八五郎:いや、んなこと知らねえスけど……。
ご隠居:それを言うなら「 八五郎:メコもセキシも?? ご隠居:「 八五郎:へぇ、そうなんスか。 ご隠居:よって、貴様の言う、「 八五郎:何スか その ご隠居:なんだ?その「 八五郎: ご隠居:何を くだらんことを言うておるか。 八五郎:だって ご隠居の言う事は ご隠居:ふむ、 八五郎:はあ、そうスか。
ご隠居:何かね? 八五郎:センセイは さっきから あっしのこと 「グシャ」って言いますけどね、それ 何なんスか?
ご隠居:何だ そんなことも知らなかったのか。
八五郎:(なぜか照れて)
ご隠居:誰が 八五郎:お、愚か者!?
ご隠居:そうだ。貴様ほど 物を知らん男は おらんからな。
八五郎:ひでぇなぁ センセイ。
ご隠居:当たり前だ。
八五郎: ご隠居:誰が 八五郎:ふうん、じゃ 何でも知ってるんスか? ご隠居:いかにも。
八五郎:へえ。
ご隠居:それこそ 八五郎:言いましたね?
ご隠居: 八五郎:そりゃ ありますよ。 ご隠居:女にも 目が2つある。
八五郎:あ、ヨメ入りってのは、目を ご隠居:さよう。これを「 八五郎:(納得)へぇ、なるほど。
ご隠居: 八五郎:あ、そうなんスか!
ご隠居:それは 「お 八五郎:あ、そうなんスか。
ご隠居:「お隣さん」。 八五郎:向かいの家で産んだら? ご隠居:「お向かいさん」。 八五郎:熊本で産んだら? ご隠居:「 八五郎:フランスで産んだら? ご隠居:「クロワッ 八五郎:ホントっスか!
ご隠居:うむ。
八五郎:あ、 ご隠居:そうだ。 八五郎:ホントっスか!?
ご隠居: 八五郎:あ そっか。そりゃ分かりやすいスね。
ご隠居:あれはヒラメと似ているようで、
八五郎:身分? ご隠居:うむ。ヒラメはカレイより 身分が上なのだ。 八五郎:そうなんスか!? ご隠居:さよう。カレイは、ヒラメの 八五郎:ホントっスか!
ご隠居:あの魚は 決して1匹では泳がん。
八五郎:なるほど、 ご隠居:さよう。
八五郎:ホントっスか!
ご隠居:あの魚も大きな群れを 八五郎:はあ、マックロだからマグロ。
ご隠居:どこのマグロが 切り身の状態で泳いでおるか。 八五郎:あ そっか。それもそうスね。納得。
ご隠居:こっちへ向かって泳いでくるから 「コチ」だな。 八五郎:いやいや、ずっと ご隠居:そういう場合は 貴様のほうで向こうに回ればよかろう。
八五郎:ああ なるほど、たしかに。
ご隠居:あの魚は いろいろな 八五郎:なるほど、 ご隠居:ふむ、ウナギか。
八五郎:へぇ、ヌルヌルしてるから「ヌル」。分かりやすいっスねぇ。
ご隠居: 八五郎:いや あの、センセイ、あっしはウナギを ご隠居:分かっておる。
八五郎:はあ……。 ご隠居: 八五郎:あ、 ご隠居:ウナギにタレをつけて焼くと 馬鹿に 八五郎:は?何言ってんスか?
ご隠居:ひっくり返さねば 八五郎:あ、焼き方の問題スか!
ご隠居: 八五郎:なるほど、「 ご隠居: 八五郎:あ、 ご隠居:ヤカンは 矢で できて――、おらんな。 八五郎:ですよねえ。ヤカンは いろんな物で できてるって聞きますよ?
ご隠居:えー、ヤカンは、昔は「ヤカン」とは言わなかった。 八五郎:へえ。何て言ったんスか? ご隠居:「 八五郎: ご隠居:おかしいのは貴様のほうだ。
八五郎:はあ、言われてみりゃあ、そうスねぇ。
ご隠居:うむ。
八五郎:なるほど、 ご隠居:いかにも。
八五郎:おや?
ご隠居:さよう。
八五郎:……何スか それ?お ご隠居:お 八五郎:名前!?そんな ご隠居:ふむ。短くスッキリ てっとり早く言うなら――、
八五郎:ずいぶん短くなったもんスね。
ご隠居:川を挟んで 両軍が 八五郎:さすが信玄!策士っスねえ! ご隠居:さて そんな大混乱の上杉軍の中に、ひとりの 八五郎:え、まさか――? ご隠居:いかにも さよう、そのまさか。
八五郎:へー、すごいもんスねえ。
ご隠居:それを見た武田軍の 八五郎:いやいやいやいや。ちょっと待ってくださいよセンセイ。
ご隠居:そうやって短絡的に物を考えるから、貴様は 八五郎:え??違う人なんスか?? ご隠居:当たり前だ。 八五郎:え、でも、同じ名前なんでしょ? ご隠居:それがどうした。
八五郎:そんなこと あるんスか!? ご隠居:同姓同名など、たいして珍しくもないだろう。
八五郎:知らねえスよ そんなこと! ご隠居:なにしろ 字も読みも同じだから紛らわしくてな。
八五郎:ハイハイもういいスよ その話は。
ご隠居: 八五郎:それでヤカンになったんスか!
ご隠居:なんだ? 八五郎:いや、 ご隠居:取っ手は アゴに掛ければ、 八五郎:あ、なるほど、 ご隠居:フタは、ポッチの部分を口にくわえて、面の代わりにした。 八五郎:あ、なるほど、顔を守るためにね。
ご隠居:当時の 八五郎:ああ、なるほど。
ご隠居:その日は 雨が激しかったと言っただろう。
八五郎:そっか、なるほど。
ご隠居: 八五郎:なるほど、枕を当てるのに邪魔にならねえように、片っぽは ご隠居:うむ。知識はともかく、全体的に 聞き分けの 八五郎:はあ、なんか ご隠居:うむ。
八五郎:日が暮れてから?
ご隠居:これがホントの、やかん学校だ。※「夜間学校」のシャレ。
■各語の語源あれこれ
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観覧自体が無料であればかまいません。いわゆる「投げ銭システム」に代表されるような、リスナーから
配信者へ 金銭または換金可能なアイテムやポイントを贈与できるシステムの有無は問いません。
ただし、ことさらリスナーに金銭やアイテム等の贈与を求めるような行為は おやめください。
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録画の公開期間も問いません。
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・台本利用に際して、当方への報告等は必要ありません。
・
?歳。
町内の間抜け男。
おバカなので、ご隠居が どれだけトンチンカンなことを言っても基本的に素直に信じちゃう。
一人称は「あっし」。
・ご隠居(セリフ数:123)
?歳。
町内の物知り隠居。
基本的に物知りだが、何でもかんでも知っているわけではなく、知ったかぶりをすることもしばしば。
自信家で尊大で上から目線。特に八五郎のことは「愚者」と呼んで見下している。
口は達者で、知ったかぶりでいい加減な言説も自信たっぷりに堂々と披露する。
一人称は「ワシ」。
・八五郎:♂
・ご隠居:♂
【ちょっと難しい言葉】※クリックすると開いたり閉じたりします(ブラウザによっては機能しません)
ばか者。おろか者。
湯を注いだばかりの香りのよい茶。
質の低い番茶でも淹れたては香りがよいように、器量の悪い娘でも 年頃になると美しく見えるということ。
茶を飲むときに食べる菓子・つけ物など。茶菓子。
外側を餡でくるんだ餅。
朱色に塗った盆。
人が多く出て そこに集まること。
飯を盛ったり汁などをすくったりする道具。
女の子。
赤ん坊。
根元を高く結いあげた髷(まげ)。娘が結う髪型。
学識が豊かで、様々なことを知っていること。
広く物事を見知って、よく覚えていること。
辞典。辞書。
そろばんや筆算などを用いず、目で確かめながら計算すること。目の子算。
皇族や華族の家で、家の事務や会計を管理したり、他の雇い人を監督した人。執事。
繁華街で違法行為や暴力行為を働く不良集団。
苦労。困難。
アルミニウムを陽極で電解処理して人工的に酸化皮膜を生成させる表面処理のこと。(意味不明)
さび止めや装飾のために、表面に不透明なガラス質の釉(うわぐすり)を焼きつけた金属器。カタカナで「ホーロー」と表記することも多い。
平安時代。源平合戦において源氏側の兵として従軍し、弓の名手として、船上の扇の的を射落とした逸話がある。
かつて日本ハムファイターズに所属していた元 プロ野球選手。この名前の選手が同時に2人いた時期があった。
黒漆塗りの弓の幹を籐で強くと巻いたもの。
ん?ボーッと つっ立っておらず 上がったらどうだ
なんか
グシャとは 貴様のことだ。
あっしの名前は八五郎っスよ?
「はっつぁん」とか「ハチ
「グシャ」なんて呼ばれた
ま、いいや。そいじゃ、遠慮なく 上がらしてもらいますよっと。
そんなもんに なってるわけ
あっしは大工っスよ。
雨も降ってねえし、日も照ってて、いい
でも 今んとこは、いい
「今日は」と言ってしまえば、「一日中」という意味になる。
夜まで天気が
(湯呑みを差し出して)
さ、茶でも飲め。
お、こりゃまた けっこうな
言うでしょ?茶ァ 出してもらったら、「けっこうな
それを言うなら「
「けっこうな お
鬼のような
それなりに美しく見えるという事だ。
あ、そうだ ご隠居、あっしね、ここ来る前に
けっこうな おデバナ 出してもらったんで、甘いもんの1つも
(手元の袋から折詰を出して)
いま開けますんで、
ホラ、茶ァ飲む時に食う お菓子のこと、「
それを言うなら、「
じゃ、これ開けますんで、
(折詰を開ける)
ほーら、どうです?うまそうな
ご隠居も 遠慮なく食ってください。
さっきから
何って、これスよ。
アンコの上をコロッと転がして
間違ってねえでしょ?
だいたい、アンコの上をコロッと転がしただけで、
このように
あ、じゃあ、何回も転がすんスか?
ってことは、あんころコロコロコロコロ
なんだか
間違った名前は、その由来にも説得力が無い。
アンコの上をコロッと転がすから「
どうだ?ワシの言ったほうが 説得力があるだろう。
「
似てるようで 全然違うモノのこと、月とスッポンて言うでしょ?
月とスッポンなど、ハナから 少しも似ておらんではないか。
月も盆も 丸いという点では似ている。
しかし 月は大きく美しく、また
だが盆は、
このように、似ていても たいそう
「月と
なるほど、覚えました。
貴様、物覚えが いいようには見えんがな。
本当に覚えたのか?
これぐらい、
ブクブクと音が鳴ってしまうという事だ。
って、それが どうしたんスか?
そんな物に火を付けても すぐに燃え尽きてしまって 役に立たん。
だから、取るに足らない事は、「
あ、それより ご隠居、そろそろ、えーと、
ま、しかし、
ここに来る前に、どこかへ行っておったのか?
けっこうな天気だったんでね、浅草の
そん中に あるでしょ?
じゃあ
あれは、「かんおん」様だ。
さらに言うなら、「かん」は「くゎん」と言う。
よって「くゎんおん様」となる。
「浅草の
ところで
人は出ておったか?
もう 人が出たの出ねえの!
それでは 出たのか 出なかったのか 分からんであろうが。
人が出たのか、出なかったのか、どっちなのかハッキリさせんか。
出たんスよ。
ならば、「出たの 出たの」と言うべきだな。
(試しに言ってみる)
もう人が出たの出たの!
……なんだか 間が抜けた言い方スねぇ。
ふむ、なるほど。
いや だから、
だが
でも言うでしょ?「どいつもこいつも」って事を、「
「
すなわち「
正しくは、「
そいじゃ、今日の あっしの話を ご
「今日は 今のところ いい
(ウンザリして)
ご隠居ぉ、こりゃ
よく それだけ色々と 物を知ってるもんだ。
まぁ 勉強には なりますけどね。
こうしてると、なんだか ここが学校で、ご隠居が先生で
あっしが生徒みたいに思えてきますねぇ。
なるほど、ここが学校、ワシがセンセイ、貴様が生徒。
まさに その通りだ。
あ。(挙手)ハイ、センセイ。
「グシャ」にも意味あるんでしょ?
「グシャ」って どういう意味なんスか?
なんで あっしがグシゃなんスか?
「
ほら、貴様の事だろう?
いやぁ、そんな
「
すなわち貴様の事だ。
あっしのこと、愚か者だって言ってたんスか!?
やっと分かったか
あのねぇセンセイ、センセイは そうやって あっしのこと
それじゃ センセイには 知らねえ事は
ワシの
町内の「
この世の中の
ワシに知らぬ物など無い。
じゃ 今から あっしが
貴様の
そいじゃセンセイ、まずは……、
ここ来る途中の
どうして カミさん もらうことを「ヨメ入り」なんて言うんスか?答えてくださいよ。
男には 目が2つあるな?
男の所に女が来て 一緒になるのがヨメ入りだ。
つまり 2つの目と 2つの目が一緒になって4つの目になる。
これ すなわち「
じゃ次。
ヨメ入りして来た女の人ってのは、
それまで「どこそこの娘さん」なんて呼ばれてたのが、
「奥さん」て呼ばれるようになるでしょ?
あれは なんで「奥さん」なんて呼ばれるんスか?
答えてください。
あれは あまり玄関先などで するものではない。たいていは 奥の部屋で するものだ。
すなわち、「奥」で「お産」をするから、「奥さん」だ。
奥で お産をするから「奥さん」。へぇ~。
え、でも、みんながみんな 奥で お産をするとは限らないでしょ?
タケんとこのカミさんなんて、
それは どうなるんスか。
じゃ 隣の家で産んだら?
じゃ次。
ん~、それじゃあ、生き物の名前なんかについて
そいじゃセンセイ、クジラってのは、どうして「クジラ」って名前になったんスか?
あれは 日本では昔
知ってのとおり背中から
そして その
毎日だいたい決まっておるのだ。
朝、海面に 勢いよくブシューッと
「お、
じゃあ、もし
じゃ次は……、
ヒラメは どうして「ヒラメ」って名前なんスか?
あ、でも、カレイは どうなんスか?
あれも
実はヒラメとは身分が違うのだ。
つまりヒラメの
じゃ次は、
先頭を泳ぐのが「
群れから はぐれて
じゃ次は、マグロは なんで「マグロ」なんスか?
大群で泳ぐ姿を 遠くから見ると、真っ黒な
よって「真っ黒」と呼んでいたのが、そのうちに つづまって「
え、でも、マグロの切り身は赤いスよ?
じゃ 「コチ」なんて魚はどうスか?
逆方向に泳ぐこともあるでしょ?
そうすれば貴様から見たら こっちへ泳いでくることになる。
じゃ「ホウボウ」って魚はどうスか?
限られた特定の場所ではなく、
じゃ ウナギはどうスか?
あれは ヌルヌルしておるので、はるか昔には「ヌル」と呼ばれておった。
なのに どうして「ウナギ」なんて名前になったんスか?
ある時、
ところがヌルは 長い体を持っておるため、
飲み込むのに たいそう
つまり、
そこから 「
あの、ウナギを裂いて 串に刺して タレつけて焼いたのを「カバ焼き」って言うでしょ?
あれは なんで「カバ焼き」って言うんスか?「ウナギ焼き」でいいと思うんスけど。
バカに
バカに
バカに
……だんだんワケが分からなくなってきたなぁ。
生き物の名前は このくらいにしといて……
じゃ次は 物の名前にしてみようかな。
そうだなぁ……、
じゃセンセイ、ここにある この
じゃ
じゃあ、ヤカンは?
鉄でできてるヤツもあれば、銅でできてるヤツもある。
アルマイトなんてのも聞きますね。あと
「
これは そんなふうには いかねえスよ?
さあセンセイ、ヤカンは なんで「ヤカン」なんスか?
それを言うなら「
「湯」とは「すでに沸いている水」だ。
沸いている物を さらに沸かして どうする。
「水を沸かして湯にする」のだから、「
そうだろう?
じゃ その「
腹ァ
さて、時は
世に言う「
センセイ、国語の授業かと思ってたら、急に歴史の授業になったんスか?
川中島の合戦ね。有名なんで、あっしでも知ってますよ。
かたや 「
対するは 「
勘弁してくださいよ。
もっと 短くスッキリ てっとり早くならねえスか?
タケシンとウエケンだ。
で、タケシンとウエケンが どうしたんスか?
ある 雨の激しい夜のことだ。
「こんな嵐の日に
深夜、武田軍が
さあ 不意を突かれた 上杉軍は、上を下への大騒ぎだ。
騒ぎを聞きつけ ガバッと跳ね起き、すぐさま
どうやら 混乱の中、誰かが 間違えて 持って行ってしまったらしい。
困った
そこに ひとつの
中の水をば ガバッと捨てて、その
その
まさに
よっぽど強かったんスね、その
頭に
で、どうなったんスか?
「
そして
「誰か あの化け物を討つ者はおらぬか!討った者には
これを聞いて 進み出たのが、誰あろう、
あのねぇ、いくら あっしがバカだからって、いい加減なこと言っちゃダメっスよ。
あっしは 国語は からっきしだけど、歴史は いくらか得意なんスから。
知ってますよ?
時代が全然 違うじゃねえスか。
なんで それが川中島の合戦に出て来るんスか。
川中島の話に出て来た
たまたま同じ名前だっただけだ。
貴様は、かつてプロ野球の
「
そこで背の高いほうを「
……わかりましたよ、同姓同名だったんスね。
で?どうなったんスか?
キリリと引き絞ると、ヒュッとばかりに切って放った。
矢は
負けじと
そのたびに
つまり、矢が当たってカーン!
矢が当たってカーン!
矢、カーン!
矢カーン!
というわけで、「ヤカン」となった。
いやー
あ、でもセンセイ、今の話、まだ分からねえ事が あるんスけど。
取っ手の部分が 邪魔になりませんか?
そいじゃ フタは どうしたんスか?
じゃ 湯が出る口はどうです?
ニョキっと
それを聞くために、穴が開いているほうが都合が
でも、逆さに かぶったら、穴が 下向いちゃいますよ?
穴が上を向いておったら、雨水が全部 耳に入って来て
大変な事になるではないか。
あ、でも、片っぽにだけ、その穴があるのは どうなんスか?
だって耳は2つでしょ?なのに、片っぽには ニョキっと
もう片っぽは
いやセンセイ、よく分かりやりした。ありがとうごぜえます。
いやー、でも 時間を掛けて教えてもらったせいか、
やたらヤカンに詳しくなったような気がするなぁ。
さて、そいじゃ 今日は このへんで。
また勉強さしてもらいに来ますんでね、センセイ。
では次は 日が暮れてから 来るが
どういうワケで?
おわり
参考にした落語口演の演者さん(敬称略)
春風亭一之輔
桂文治(10代目)
三遊亭圓生(6代目)
三遊亭金馬(3代目)
春風亭柳朝(5代目)
柳家小せん(5代目)
オンラインの語源由来辞典・国語辞典・wikipedia等を中心に調べてみました。
1つの言葉でも、その成り立ちには様々な説があるようです。
●餡ころ餅
①餡が衣のように餅をくるんでいるので「餡衣餅(あんころももち)」と呼ばれ、「ころも」の「も」が省略されて「餡ころ餅」となった。
②餅に餡をつける際、あずき餡の中で餅を転がすから。
※餡ころ餅は、「餡転餅」と表記されたり、「餡ころばし餅」と呼ばれたりすることもある。
③「餡ころ餅」の「ころ」は、「石ころ」「犬ころ」「さいころ」等、小さい物・丸い物・ころころした物に添えられる「ころ」である。
●月とすっぽん
①「丸い」という共通点を持つ二者を比べた物。(すっぽんは「まる」とも呼ばれ、すっぽん料理のことを「まる料理」と言うこともある)
また、このときの「月」は水に映った月だという説もある。
②「月と朱盆(しゅぼん)」が訛ったもの。
③「月と素盆(すぼん)」が訛ったもの。
●河童の屁
①水中での屁は勢いが無いから。
②「木っ端の火(こっぱのひ)」が訛ったもの。
●猫も杓子も
①「禰子(ねこ)も釈氏(しゃくし)も」。「禰子」は「神主」、「釈氏」は「僧侶」のこと。
②「女子(めこ)も弱子(じゃくし)も」。「女子」は「女性」、「弱子」は「子供」のこと。
③「寝子(ねこ)も赤子(せきし)も」。「寝子」は「寝る子」、「赤子」は「赤ん坊」のこと。
④「杓子」は「しゃもじ」のことで、主婦が使う物であることから「主婦」を表し、「猫も主婦も家族総出で」という意味。
⑤猫はどこにでもいる動物、杓子は毎日使う物で、どちらも「ありふれた物」ということから。
⑥一休さんが言った説。
一休宗純の説話集『一休咄』に、次のような一説がある。
「生まれては 死ぬるなりけり おしなべて 釈迦も達磨も 猫も杓子も」
この「猫も杓子も」は語呂が良かっただけで深い意味は無いのだとか。
●クジラ
①「クロシラ(黒白)」が転じたもの。「黒白」なのは、「皮膚は黒く 中の肉(脂肪?)は白いから」、または「背は黒く、腹は白いから」。
そういえば葬儀等で使われる白黒の幕を「くじら幕」と言いますね。
②「ニクジロ(肉白)」の「ニ」が脱落して訛ったもの。
③「クシシラ」が転じたもの。「ク」は「大きい」を表す朝鮮古語。「シシ」は「獣」のこと。「ラ」は名詞を作る接尾語だそうです。
④「クシシシ(奇し獣)」が転じたもの。「珍しい生物」という意味と、「獣(シシ)」には「獣の肉」という意味もあるので、「珍しい食材」という意味もあるのかも。
⑤「クチビロ(口広)」の短縮「クチロ」が転じたもの。口が大きいから。
⑥「クジリ(久慈理)」が転じたもの。常陸国(ひたちのくに)に久慈理(くじり)という丘があり、その形がクジラの背中に似ていたから。
他にもいくつかあるようです。
●ヒラメ
①平たい体に目が付いているから。
②「メ」は、「ヤマメ」「アイナメ」等と同じく「魚」を表す語なので、単に「平たい魚」という意味。
●カレイ
①「カラエイ」が転じたもの。昔はエイの仲間だと思われていたそうです。
「カラ」は「(韓(から)=朝鮮)でよく獲れる」という説と「枯れ葉のような体色」という説がある。
②「カタワレイオ(片割魚)」が転じたもの。ある魚が2つに裂けて、目のあるほうがこの魚だという中国の伝説から。
カレイはその目で、片割れである目の無いほうを探しているのだとか……。
●タイ
「タイラ(平ら)」から。昔の文献には「平魚」と書かれているのだとか。ヒラメやカレイのほうが平らだと思いますけどね。
●マグロ
①目が黒いから。目黒/眼黒(メグロ)→マグロ。
②背が黒く、泳ぐ姿が真っ黒な小山に見えたことから。
③常温で時間が経つと、体色が黒くなることから。
●コチ
「コツ(笏)」から。「笏」は神主が持つ「笏(しゃく)」のことで、それに形が似ていることから。
●ホウボウ
①脚のような胸ビレを使って這うように移動することから、「這う這う」が転じたもの。
②方々を這うように移動することから。
③ウキブクロを使って「ボウボウ」という音を出すことから。
④↑の音が方々に響き渡ると言われていたことから。
●ウナギ
もともとは「むなぎ」と呼ばれていた。
①「む」は「身」を表し、「なぎ」は「長い」を表す。体が長いから。
②胸が黄色いので「胸黄(むなぎ)」。
③家を建てる際、屋根のてっぺんに横に渡す部材「棟木(むなぎ)」に似ていることから。
●カバ焼き
①もともとはウナギの身を開かずに串に刺して焼いており、その見た目が「蒲の穂(がまのほ)」に似ていたことから「がま焼き」と言い、それが転じたもの。
②焼きあがった色や形が「樺の木(かばのき)」に似ていたことから。
③焼いている香りがたちまち伝わることから、「香(か)」が「疾(はや)い」→「香疾(かばや)」→「香疾焼き(かばややき)」が
転じたもの。
④焼くと かんばしい香りがするので「かんばしい焼き」となり、それが縮まったもの。
⑤「蒲鉾焼き(かまぼこやき)」という料理と混同され、縮まったもの。
●やかん
もともとは、薬を煮出すために用いられていたので「薬鑵(やっかん/やくかん)」と呼ばれており、それが縮まった。
「鑵」は「金属製の容器」という意味の漢字。
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