声劇台本 based on 落語 「
【書き起こし人 註】
古典落語をベースにしていますが、あくまでも"声劇台本"として作成しています。
なるべく声劇として演りやすいように、元の落語に様々なアレンジを加えている場合があります。
アドリブ・口調変更・性別転換 等々OKです。
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<登場人物> <配役> 【ちょっと難しい言葉】 ここから本編
八五郎:(朝。珍しく気分よく早起きができた八五郎)
タツ:オーウ、ハチ 八五郎:ん?
タツ:お?起きてるじゃねえか。珍しいねえ。
八五郎:いや それがさ、ゆうべ タツ:実は、 八五郎:頼み? タツ:ああ。
八五郎:5円……?
タツ:分かってる、みなまで言うな。
八五郎:いや、おめえに頭 下げられると、こっちが きまり悪いよ。
タツ:返してくれるか!
八五郎:ああ。
タツ:来月?
八五郎:ああ、急ぐのかい?
タツ:いや10日も 八五郎:そうなの?
タツ:4、5日じゃ困る。 八五郎:2,3日…… タツ:無理無理。 八五郎:あした…… タツ:もう 八五郎:ええ!?どこまで いくんだよ! タツ:今晩!今晩で頼む! 八五郎:今晩!?
タツ:無茶は承知だ。
八五郎:なんとかしてくれったって…… タツ:今晩 取りに来るから!
八五郎:え!?おい!タツ!
甚兵衛:おーい 八五郎:なんだよ今日は次から次へと……。
甚兵衛:ああ 八五郎:ええ、なんだか分からねえんスけど、
甚兵衛:いいことじゃないか。
八五郎:いやいやいやいや。
甚兵衛:何言ってんだい? 八五郎:まぁこっちの話っスよ。
甚兵衛:いや今日はね、お前さんに 八五郎: 甚兵衛:そう。お前さんも もう いい 八五郎:そうスかねえ? 甚兵衛:そうだよ。
八五郎:そうは言ってもねえ。
甚兵衛:いやいや、それがそうじゃない。
八五郎:昔の人は おかしなこと言うねえ。
甚兵衛:そうだ。
八五郎:なるほどねぇ。言われてみりゃあ、たしかにそうだ。
甚兵衛:それが いるんだよ。
八五郎:ずいぶん 甚兵衛:なかなか いい娘さんだよ。
八五郎:いいスねえ。 甚兵衛:背がスラッと 八五郎:高いんスか! 甚兵衛:低い。 八五郎:低いんスか!?
甚兵衛:肌の色が 八五郎:白いんスか! 甚兵衛:黒い。 八五郎:黒い!? 甚兵衛:はっはっは、ビール 八五郎:笑ってる場合じゃねえスよ……。 甚兵衛:鼻がまた いいんだ。 八五郎:鼻が? 甚兵衛:まことに 八五郎:いや 甚兵衛:その代わりオデコが見事に 突き出てる。 八五郎:オデコが!? 甚兵衛:これが立派なオデコでねえ。
八五郎:どんだけ出っ張ってんスか! 甚兵衛: 八五郎: 甚兵衛: 八五郎:何が 甚兵衛:またアゴが… 八五郎:アゴもですか! 甚兵衛:長~いアゴが、ゆるやかな 八五郎: 甚兵衛:なかなか いい お顔だろう? 八五郎:そうスかねぇ……? 甚兵衛:想像してごらん?
八五郎:それ、いいことなんスかねぇ……? 甚兵衛:目は あるか無いか 分からないくらい小さいんだがね、
八五郎:それ、人間なんスか……? 甚兵衛: 八五郎:ええ……(困惑) 甚兵衛:返事や 八五郎:ええ……(困惑) 甚兵衛:カラダのほうに目をやれば、
八五郎:ええ……(困惑) 甚兵衛:おまけにウワサでは 出ベソだって話だ。 八五郎:ええ……(困惑) 甚兵衛:まあ こんな けっこうな女性なんだが……、
八五郎:(超驚愕)ひとつ!?!?
甚兵衛:何言ってんだい、キズじゃないよ。 八五郎:本気で言ってんスか……?
甚兵衛:実は お 八五郎:はぁ!? 甚兵衛:まぁ こういう娘さんなんだがね。
八五郎:もらうわけないでしょ!
甚兵衛:そうかい?
八五郎:どうやったら これが悪い話じゃない なんて思えるんスか……。 甚兵衛:ま、お前さんが 気に入らないと言うならしょうがない。
八五郎:ちょちょちょ ちょっと 甚兵衛:ど、どうしたんだい? 八五郎: 甚兵衛:ん?
八五郎:もらいます。 甚兵衛:え? 八五郎:もらいます。 甚兵衛:何を? 八五郎:5円を。 甚兵衛:何言ってんだい。
八五郎:ですから、もらうんですよ。
甚兵衛:おかしな言い方だねえ。
八五郎:どっちでもいいんスよ そんなことは。
甚兵衛:いや、だって お前さん、さっき 冗談じゃないって…… 八五郎:いやそれは、いちばん重要な情報を聞いてなかったから。 甚兵衛:ふうん。
八五郎:何が? 甚兵衛:お 八五郎:ええ、聞きましたよ。 甚兵衛:いいのかい? 八五郎:当たり前じゃないスか。
甚兵衛:なるほど、ものは考えようだねえ。
八五郎:いやいや、進めるだなんて そんな 甚兵衛:こ、今晩!?
八五郎:無茶でもなんでも、今晩じゃなきゃ困るんスよ! 甚兵衛:いやいや、いくら めでたいことは早いほうがいいって言ったって、今晩てのは…… 八五郎:そこを何とか! 甚兵衛:いや だって急にそんなこと言われても、 八五郎:あのねえ 甚兵衛:どういうことだい? 八五郎:お願いですよ 甚兵衛:何言ってんだい。 八五郎:いやむしろ5円だけ今晩もらって、カミさんは30年後ぐらいでいいんスよ! 甚兵衛:そんなバカな話があるかい。
八五郎:ホントですか!
甚兵衛:そうと決まったら お前さん、
八五郎:へい!分かりやした! 甚兵衛:じゃあ私は これから 八五郎:いやぁ、妙な日だね今日は……。
タツ:ハチ 八五郎:(目覚める)んぁ……?
タツ:おはようじゃねえよ!
八五郎:落ち着けよ。
タツ:何が大丈夫なんだよ! 八五郎:できたんだよ。 タツ:何が? 八五郎:5円。 タツ:え? 八五郎:5円できたんだよ。 タツ:ええ!?ホントか!? 八五郎:ああ、ホントだよ。 タツ:え、じゃあ、どっかに金の 八五郎:いいや?ずっとウチにいたよ。 タツ:え……?
八五郎:昔から言うじゃねえか、「 タツ:いや そりゃ言うけどよぉ、普通は 寝てて金が入るなんてこと ねえだろ……。
八五郎:今晩 俺の手元に来ることになってる
。
タツ:今晩?
八五郎:心配すんな、確かなスジからの金だ。 タツ:(安堵して)そうか。
八五郎:いいってことよ。そもそもは俺が借りてた金なんだからさ。
タツ:いや それがな……大きい声じゃ言えねえんだが……
八五郎:絶対 言ってねえだろ。 タツ:まあ、とにかく、おのれの 八五郎:え!? タツ:ホラ、 八五郎:ええ……(困惑) タツ:だから なんとか5円 用意しようと思ったんだけど、
八五郎:それは……うん……よかったよ……。 タツ:ホントよかった。
八五郎:俺もさ……言うことがあるんだよ……。 タツ:ん?なんだい? 八五郎:実はさ……、俺、このたび……、 タツ:え!?
八五郎:そうなんだよ。 タツ:オイオイ全然知らなかったよ!
八五郎:ん~……、それが……めでたいような……めでたくないような…… タツ:ん?なんで? 八五郎:いや そのカミさん、 タツ:え!?
八五郎:そういや名前 聞いてなかったな。 タツ:まさかとは思うけど、 八五郎:いるらしいね。 タツ:ええ!?
八五郎:背がスラっと低くて 肌の色が タツ:あ、オナベだわ。 八五郎:オナベか……。 タツ:えええ、 八五郎:あ、どうも。金に目がくらんだ どっかのバカです。 タツ:いやいやいやいや!
八五郎:どうするも こうするも……もう タツ:オメエそれでいいのかよ! 八五郎:まぁいいよ。
タツ: 八五郎:いいじゃねえか。
タツ:ええ……(困惑)
・
?歳。
町内の間抜け男。
愛称は「はっつぁん」もしくは「ハチ公」。
一人称は「あっし」もしくは「俺」。
・タツ(セリフ数:45)
?歳。
八五郎の友人。
一人称は「俺」。
・
?歳。少し年配ぐらいのほうがいいかも。
道具屋。
世話好き。
・八五郎:♂
・タツ/甚兵衛:♂
持参金(じさんきん)
嫁が結婚の時、実家から持参する金。
あるとき払いの催促なし(あるときばらい の さいそく なし)
借金の返済について、お金の余裕があるときに返せばよく、催促もいっさいしないということ。
やもめ
ここでは、妻のいない男。独身の男。
所帯を持つ(しょたい を もつ)
一家を構えて独立した生計を営む。結婚して家庭を作る。
先方(せんぽう)
相手の人。相手方。
湯(ゆ)
ここでは湯屋(ゆや) つまり お風呂屋さんのこと。
工面(くめん)
金銭を整えようと、あれこれ工夫すること。
算段(さんだん)
何とか方法を考えて都合をつけること。
果報は寝て待て(かほう は ねて まて)
本来の意味は、人事を尽くした後は気長に良い知らせを待つしかないということ。
名代(みょうだい)
ある人の代わりを務めること。また、その人。代理。
女中(じょちゅう)
家や店などに雇われて雑用や給仕に当たる女性。
のれん分け(のれんわけ)
奉公人や家人に同じ屋号の店を出させること。
(伸びをする)んーーっ!
いやあ、気持ちのいい朝だなァ。
ゆうべ 酒 飲まずに寝たせいか、こんな
たまには こんな朝も いいもんだなぁ。
昔の人が いいこと言ってるよ、「早起きは
今日は 何か いいことがあるかもしれねえな。
さぁ~て、まだ仕事までは時間あるし、ちょいと
ハチ
オウ、タツじゃねえか。
俺は てっきり まだ寝てると思ってたよ。
こんな時間にスカッと目が覚めたんだよ。
で、どうしたんだい?こんな朝っぱらから。
ホラ、半年ほど前だったか……、おめえに5円、貸したろ?
ああ、借りた 借りた。
いや、でも、あれは……
たしかに俺は あの5円を貸したとき、
あるとき
おめえの亡くなった
あの時は 俺も金に困ってるってわけでもなかったから、
おめえの
返してくれりゃあいいと思ってたんだ。
ところがよ、ちょいと のっぴきならねえ事情ができちまって、
金が
あるとき
きまりが悪いし、おめえにも申し訳ねえとは思うんだけどよ、
すまねえ、あん時の5円、返してくれ。頼む。
どう言われようと 借りた金は 借りた金。
なかなか
まあでも、おめえにも事情があるんだもんな……。
分かった。5円、返すよ。
ありがてえ!
じゃあ、そうだなぁ……。
来月の今頃までには、どうにか用意しとくよ。
いや、来月なんて
じゃ10日で なんとかするよ。
じゃ4、5日で……
無茶 言うなよ!
けど こっちも その金がねえと困るんだよ!
頼む!今晩までに5円!なんとかしてくれ!
頼んだぜ!じゃあな!(去る)
―― 行っちまったよ……。
なんだよ、たまに早起きするとロクなこと ねえなぁ……。
なにが「早起きは
あんな借金、すっかり忘れてたよ……まいったなぁ。
5円なんて
(ため息)なんか、仕事 行く気も無くなっちまったなぁ。
もう知らねえや、
はーい。
あ、
こんな早くに起きてるなんて珍しいじゃないか。感心感心。
今日に限って 早く目が覚めちまったんスよ。
昔の人は言った。「早起きは
昔の人の言うことなんざアテになりませんよ。
あんなのウソ。5円の損ですよ。
ところで、あっしに何か用スか?
いつまでも
そろそろ
今 ひょいと部屋を見りゃあ、
着物は脱いで
ずいぶんホコリっぽいところを見ると、ろくに掃除もしてないんだろ?
嫁さんをもらえば そんなことも なくなる。
悪いことは言わない、嫁さん もらいな。
見りゃ分かるでしょ?ご覧のとおりの貧乏暮らし。
あっし1人 食ってくのも精一杯だってのに、
カカアなんざ もらってる場合じゃねえスよ。
昔の人は言った。「
1人が食えないのに、2人になったら 食えるってんですか?
というのはね、やもめには無駄が多いんだ。
飯なんか お前さん、自分で おかず作るのが
どっか店に行って食うだろ?
その金をカミさんに渡してごらん?
材料買って 調理して、同じ金で 夫婦 3食分の飯を作ってくれて まことに無駄が無い。
着る物にしたって そうだ。
お前さん、着てる物が
で また新しいのを買う。これが無駄だ。
着てる物が
朝なんかもね、お前さんが起きて 顔洗ったり 歯を磨いたりしてる
カミさんが
お前さんが仕事に出てる
そうすりゃ お前さんは仕事に専念できて
どうだい、いいことづくめだろ?
でもねぇ
嫁に来てくれるような女、いるんスか?
今回の
どんな女なんです?
何スか スラッと低いって!
何スか そのビール
うまい たとえだねえ。
ヘタに自己主張をしない
ひさし
まさに
意味わかんないスよ!
その曲線の美しさたるや、まさに芸術の
ご婦人が 両手に荷物を持って歩いている。
石に けつまずいて前向きに倒れる。
これが普通の ご婦人なら、地面に鼻を したたかに打ちつけちまう。
ところが この娘さんの場合、オデコと
鼻にはキズひとつ付かない。
その代わり 口はバカみたいに大きいよぉ。
でもね、メシなら軽く5人前は食べるんだ これが。
でもね、余計なことはペラペラ喋るんだ これが。
ハト
この娘さんにね、たったひとつキズがある。
え、今までのはキズじゃなかったんスか!?!?
じゃあ、その、キズって何なんスか?
どうだい?嫁にもらわないかい?
顔はバケモンみてえだし、おまけに お
冗談じゃねえや!
悪い話じゃないと思ったんだけどねえ……。
別に無理に
じゃあ他を当たってみよう。
まぁこんな娘さんでも、5円の金を付けると言えば、
どこかに もらい手の1人や2人 見つかるだろ。それじゃ。(去ろうとする)
5円の金を付ける……!?
ああ、まぁ
5円は この娘さんの
カミさん付きの5円を。
5円にカミさんが付いてくるんじゃないよ。
カミさんに5円が付いてくるんだよ。
とにかく そのカミさんと5円、もらいます!
まぁ お前さんが その気になってくれるのは嬉しいけども。
ホントに大丈夫なのかい?
子供ができなくて苦労してる夫婦が いくらでもいるんだ。
中にゃあ わざわざ赤の他人の子供 もらってきて
それを考えりゃあ、その娘さん、ハナから
それじゃ この
今晩ください。
無茶 言っちゃいけないよ。
今晩なんて……
今晩!なんとか今晩で!
あのね、カミさんは まぁいつでもいいんスよ。
5円!5円だけは今晩!
(ため息)分かったよ。
まぁ考えてみりゃ、お
それじゃ、今晩 来てもらえるように 私が手配しようじゃないか。
ありがとうございます
夜までに
それから部屋も片付けてキレイにして、
いつ嫁さんを お迎えしても いいようにしておくんだよ?
いいね?
それじゃ。(去る)
起き抜けに 5円返せだなんて言われて困ってたら、
今度は その5円 持って カミさんが来るってんだからねぇ……。
しかし ありがたいねえ。
5円なんて
向こうから転がり込んで来やがったよ。
これでタツにも借金が返せるし、ひと安心だ。
さぁて、
あいつのことだからな、どうでもよくなって寝ちまってるかもしれねえなぁ。
ちょいと様子 見て行くか。
(長屋の八五郎の部屋の前)
(表戸を開ける。八五郎が布団で寝ている)
あッ!コイツやっぱり寝てやがる!
オウッ、ハチ
ああ、タツじゃねえか……おはよ……
寝ちまってるんじゃねえかと 心配して来てみりゃ
5円なんとかしてくれって言ったろ!?
友達なら、たとえ無理でも 少しは金の
大丈夫だよ。
オメエは不思議な男だねぇ……。
そうやって
どんな
で、その金、どこにあるんだ?
本当だな?
その金、アテにしていいんだな?
いや~助かった!
オメエのおかげで 肩の荷が下りたよ。
恩に着るぜ。ありがとうよ!
それにしてもよぉ、オメエが俺なんかに 金の相談するなんて珍しいじゃねえか。
なんかあったのか?
オメエにだけは事情を話すよ……。
去年の暮れによぉ、俺、ウチの
そしたら、飲めもしねえのに、さんざん酒すすめられてよぉ、しこたま飲んじまったんだ。
で、夜遅くになって どうにか店に帰り着いて、2階の自分の部屋に戻ったんだけど、
いやもう 頭痛いやら気持ち悪いやらで、眠ることもできねえ。
もう苦しくて ウンウンうなってたら、ウチの
オナベって名前の女なんだけど、まぁ
背中さすってくれたり 水くんで来てくれたり 手ぬぐい
ずいぶん親切にしてくれてよぉ。
で、まぁ、その……
いや俺も、普段なら そんなことは ねえんだが、あん時は 酒 入ってたし、
暗くて顔もよく見えねえってのもあって……その……
オナベに、手ェ 出しちまったんだ。
いやぁバカなこと しちまったよ。
昔の人は うまいこと言ったもんだ。
「後悔 先に立たず。その前にムスコが
できちまったって言うんだよ……子供が。
俺もう目の前が真っ暗になっちまったよ。
というのもな、俺 近々 のれん分け させてもらうことになってるんだよ。
しかも、
そんな時に、酒に酔って
俺の今までの
で、俺 すっかり困り果てちまってよぉ。
道具屋の
で、洗いざらい ぶちまけて相談したらよ、
とにかく5円という金を用意しろって言うんだ。
あんな女でも、5円という金を付けてやれば、金に目がくらんで
嫁にもらうバカが どこかにいるだろうって言うんだな。
事情が事情だから なかなか相談できる相手もいなくてよ。
そこでハッと思いだしたんだ、オメエに5円 貸してたのを。
いつでもいいって言ってたのを 急に返せなんて言って 悪かったけどよ、
まぁ そういうワケだったんだ。
でもオメエの おかげでホントに助かったよ。
ありがとうよ。
オメエ、カミさん もらうの!?
それならそうと言ってくれよォ。
それ知ってたら さすがの俺も オメエに金の
すまなかったなぁ、そんな大変な時に 金の
まぁでも、何にしても めでてえなぁ。
友達として お祝いするぜ。おめでとう!
まさかオナベじゃねえだろうな?
まさかオナベ……!?
ひさしのオデコに しゃくれアゴに
冗談言ってる場合じゃねえだろ!
オメエどうするんだよ!
しょうがねえ。もらうよ。
もう もらうって言っちゃったもん。
誰の子供か分からねえより、オメエが父親だって分かってるほうが。
まぁ、オメエがいいってんなら、いいんだけどよぉ……。
え?じゃあ、5円は どうなるんだ?
八五郎:5円は、今晩
タツ:え?でも俺が
八五郎:あれ?
タツ:で、俺もオメエから 5円もらわなきゃ、
八五郎:どうなってんだ?
タツ:なんだか ややこしいことになってんなオイ。
ちょっと落ち着いて考えてみようじゃねえか。
(煙草入れを取り出して)
八五郎:な~るほど、昔の人は うまいこと言ったもんだ。
タツ:何が?
八五郎:金は
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