声劇台本 based on 落語

大安売りおおやすうり


 原 作:古典落語『大安売り』
 台本化:くらしあんしん


  上演時間:約10分


【書き起こし人 註】

古典落語をベースにしていますが、あくまでも"声劇台本"として作成しています。
なるべく声劇として演りやすいように、元の落語に様々なアレンジを加えている場合があります。

アドリブ・口調変更・性別転換 等々OKです。



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<登場人物>

棟梁とうりょう(セリフ数:50)
 ?歳。
 大工の棟梁(とうりょう)。
 相撲好きで、関取の玉双(たまふたつ)を贔屓にしている。



関取せきとり(セリフ数:50)
 ?歳。
 おすもうさん。四股名しこなは「玉双」(たまふたつ)。
 一人称は「自分」。





<配役>

・棟梁:♂

関取:♂




【ちょっと難しい言葉】※クリックすると開いたり閉じたりします(ブラウザによっては機能しません)
  • 棟梁(とうりょう)
    組織や仕事を束ねる中心人物。落語では大工の親方を指して言う場合が多い。

  • ごっつぁんです
    おすもうさんが使う隠語で「ありがとうございます」の意味。「ごちそうさまです」が訛ったんだとか。

  • 上方(かみがた)
    京都付近。関西地方。

  • 本場所(ほんばしょ)
    大相撲で、力士の番付を決めるための正式な場所。現在は年に6回だが、昔は年に2回だったり4回だったりした。

  • 軍配(ぐんばい)
    ここでは、大相撲で 行事が持つ「軍配うちわ」のこと。

  • 軍配が返る(ぐんばい が かえる)
    大相撲で、取組開始の制限時間が来ると、行事は取組開始の合図として軍配うちわを裏返し、力士に取組を始めさせる。

  • はたき込み(はたきこみ)
    相撲の決まり手の一つ。突きや押しの攻防の中で、体を開いて相手の肩や背中をはたいて倒す技。

  • 右差し(みぎざし)
    「差す」とは 自分の手を相手の脇の下に入れること。「右差し」は自分の右手が相手の左脇に入っている状態。

  • 寄り切り(よりきり)
    相撲の決まり手の一つ。相手と組んで体を密着させ、前進して相手を土俵外に出す技。

  • うっちゃり
    相撲の決まり手の一つ。俵際まで寄せられた力士が、腰を落とし体を捻って相手を土俵の外へ投げるもの。

  • 勇み足(いさみあし)
    相撲で、相手を土俵ぎわに追い詰めながら勢い余って自分から土俵外に足を出し、負けになること。

  • 支度部屋(したくべや)
    力士の控え室。

  • けたぐり
    相撲の技の一つ。立ち合いの際、相手の足首あたりを強く蹴り、手をたぐって倒す技。漢字で書くと「蹴手繰り」。

  • 変わり種(かわりだね)
    同種の人の集団の中で、普通の人とは違った特色や経歴をもつ人。

  • 智ノ花(とものはな)
    かつて立浪部屋に所属していた元 力士。最高位は東小結。元 高校教師という異色の経歴が話題になった。

  • 突き出し(つきだし)
    相撲の決まり手の一つ。相手の胸や顔を掌で突いて土俵の外に出す技。

  • 押し出し(おしだし)
    相撲の決まり手の一つ。片手または両手を相手の脇の下や胸などに当てて押しあげ、土俵の外に出す技。野球では、満塁からの四死球で得点が入ること。

  • 千秋楽(せんしゅうらく)
    大相撲や演劇など、興業の最後の日。

  • 京(きょう)
    ここでは京都のこと。

  • 花相撲(はなずもう)
    本場所以外に、臨時に興行する相撲。勝敗が番付等に反映されない。

  • 土つかず(つちつかず)
    負けなしということ。

  • ちゃんこ
    相撲部屋で力士が作ったり食べたりする料理全般を「ちゃんこ」と呼ぶ。鍋だけじゃないんですねえ。

  • 四股名(しこな)
    大相撲で、力士の土俵上での名前。もともとは「醜名」と書いたんだとか。





ここから本編




棟梁:(往来を歩いていると、顔なじみの関取を見かける)
   お?ありゃあ、稲荷いなりやま部屋べや玉双関たまふたつぜきじゃねえか。
   
   オーウ、関取せきとりィ!

関取:お、これはこれは、誰かと思えば 棟梁とうりょうさんではありませんか。
   
   いつも贔屓ひいきにしてくださって、ごっつぁんです。

棟梁:いやあ、久しぶりじゃねえか。
   
   長いこと見なかったけど、どうしてたんだい?

関取:はい。親方と一緒に 上方かみがたのほうへ行っておりまして。
   先日、江戸へ戻ってまいりました。

棟梁:上方かみがた
   ああ!そういや大阪おおさか本場所ほんばしょやってたんだっけか!
   
   え!それじゃ お前さん、本場所ほんばしょ相撲すもうとってきたのかい!?

関取:はい。お陰様かげさまで。

棟梁:そうかい!
   すげえじゃねえか、本場所ほんばしょ土俵どひょうに上がるなんてよォ!

関取:ごっつぁんです。
   
   自分のような若輩者じゃくはいもの本場所ほんばしょつちむなど 恐れ多いことですが、
   親方衆おやかたしゅう・ご贔屓ひいきしゅうの おなさけをもちまして、
   十日間とおかかん 土俵どひょうに 上げてもらうことができました。 ※昔の大相撲は 1場所=10日。

棟梁:お前さんはエライねえ。
   俺は お前さんの そういう謙虚けんきょな所が好きなんだ。
   
   「親方衆おやかたしゅう・ご贔屓ひいきしゅうの おなさけをもちまして」なんて
   なかなか言えるもんじゃねえよ。
   きちんと 立てる所を立てる。いい心がけじゃねえか。
   
   ますます贔屓ひいきにしたくなったぜ。

関取:ごっつぁんです。

棟梁:で?勝ち負けはどうだったんだい?

関取:はい。無我夢中で 取ってきましたが、勝ったり負けたりでした。

棟梁:エライ!
   何がエライって、お前さんの その正直な所さ。
   
   百何十ひゃくなんじゅうも離れた 遠い上方かみがたの話だよ?
   デタラメ言ったって こっちは分からねえんだ。
   
   全部勝ちましたって言われりゃあ、こっちは
   おめでとう!ってんで 祝儀しゅうぎの1つも渡すところだよ?
   
   それを 見栄みえなんぞらずに 勝ったり負けたりとは、
   正直でいいじゃねえか。
   ますます気に入ったぜ。

関取:ごっつぁんです。

棟梁:オウ、その 勝ったり負けたりをよ、くわしく聞かせてくれよ。
   
   初日しょにちはどうだったんだい?

関取:はい。なにしろ本場所ほんばしょつちむことなんて滅多めったにありませんから、もう無我夢中で。
   
   軍配ぐんばいかえると同時に 頭から思いっきり突っ込んでいったんですが、
   はたき込みで負けました。

棟梁:負けちゃったのか……。
   
   まぁしょうがねえよ。
   まだ初日しょにち、固さが取れてなかっただけだ。
   気にしちゃ いけねえよ。
   
   二日ふつかはどうだった?

関取:はい。今日こそは負けられん、親方衆おやかたしゅう・ご贔屓ひいきしゅうのおなさけに対して申し訳が立たん。
   
   相手のマワシを取って 得意の右差みぎざし。
   頭を付けて グッグッグッグッと、土俵際どひょうぎわまでって行きました。

棟梁:いいねえ いいねえ。
   
   りで勝ったんだな!

関取:うっちゃりで負けました。

棟梁:ええ……うっちゃられたのかよ……。
   
   まあまあまあ、気にしちゃいけねえよ、そういうことも あらぁ。
   "場所負ばしょまけ"ってヤツだ。ここから調子 上げてきゃ いいんだよ。
   
   三日みっかはどうだった?

関取:はい。今日こそは負けられん、親方衆おやかたしゅう・ご贔屓ひいきしゅうのおなさけに対して申し訳が立たん。
   
   得意の右差みぎざしから 頭を付けて いきおいよく土俵際どひょうぎわまでって行きました。

棟梁:大丈夫か?また うっちゃられたんじゃ ねえだろうな?

関取:いえ、うっちゃるひまあたえまいと、一気に攻めましたので。

棟梁:いいねえ!
   
   じゃ今度こそ、りで勝ったんだな!

関取ったと思った瞬間、いきおあまって 右足が土俵どひょうの外に出てしまい、
   いさあしで負けました。

棟梁:何やってんだよ……。
   また負けちゃったのかよ……。
   
   四日目よっかめはどうだった?

関取:はい。今日こそは負けられん、親方衆おやかたしゅう・ご贔屓ひいきしゅうの…

棟梁:いや それ もういいよ。
   相撲すもう中身なかみだけ、手短てみじかに話してくれよ。

関取:はい。得意のを お見舞みまいしてやろうと思いまして。

棟梁:!いいねえ!
   こちとら江戸っ子だ。なんざ 威勢いせいが良くて大好きだ!
   
   また力士りきしの あのデカい手からされる ってのは、
   ものすごい威力いりょくだって言うじゃねえか!

関取:はい。ほおあとが 赤く残りますし、
   一発で 頭がグラグラとれて 気を失うこともあります。

棟梁:ええ~ホントかい!
   いやぁ信じられねえなあ!
   あんな図体ずうたいのデカい相撲すもう取りが、一発で気絶しちまうってのか!?

関取:はい。その証拠に、自分も、気付いたら 支度したく部屋べや布団ふとんに寝かされてました。

棟梁: ―― え??
   
   え、なに?
   
   もしかして ―― 四日目よっかめ相撲すもうの話 ―― ??

関取:はい。

棟梁:ちょっと待てよ!
   
   お前さんが をお見舞みまいしたんじゃなかったのかよ!

関取:はい。得意のを お見舞みまいしようと、軍配ぐんばいかえると同時に
   相手の顔面がんめんめがけて 右手を突き出したところまでは覚えてるんですが ――

棟梁:そっから記憶ないの?
   
   で、目が覚めたら 支度したく部屋べや布団ふとん

関取:はい。あとから聞いたところによると、
   こっちのをサッとかわした相手が
   逆にしてきて、
   それを まともにらった自分は、
   一発で 仰向あおむけにびてしまったんだそうで。

棟梁:なんだよ だらしねえなぁ……。
   四日目よっかめも負けたんじゃねえか……。
   
   じゃ中日なかび五日目いつかめはどうだったんだ!?

関取:はい。中日なかびの相手というのが、前日ぜんじつ相撲すもうでケガをしておりまして。

棟梁:ケガ?

関取:はい。左の足首を骨折したらしく、包帯ほうたいをグルグル巻きにして、
   たいそう痛々しい姿でした。

棟梁:そんな状態で土俵どひょう 上がんのかよ……。
   休みゃ いいじゃねえか……。

関取:はい。自分も 相手が気の毒で 気が進まなかったのですが、
   どんな相手にも誠心誠せいしんせい ぶつかるのが しん相撲道すもうどうだとおもなおし、
   正々堂々と勝負することにしました。

棟梁:まあ、勝負の世界だからな。
   相手だって それを承知で 土俵どひょうに上がってんだ。
   
   で、どうなった?

関取:はい。軍配ぐんばいかえると同時に、包帯ほうたいが巻かれた足首めがけて
   思いっきり けたぐり・・・・をお見舞みまいしました。

棟梁:おいおいおいおい!
   オメエ ひでえ奴だな!
   何が正々堂々だよ……。
   
   相手 骨折してんだろ?
   わざわざ そこ狙わなくたって、普通の相撲ずもうで勝てそうなもんじゃねえか……。
   
   折れた足 られたんじゃ、相手、さぞ痛かったろうなぁ。

関取:はい。苦痛に顔をゆがめ、ひたいには脂汗あぶらあせ

棟梁:ほらみろ かわいそうに……。
   
   で、どうなった?

関取:はい。まだ しぶとく立ってますんで、
   とどめとばかりに 足首めがけて もう1発 りを……

棟梁:おいおい!もう勘弁かんべんしてやれよ!
   
   
   ん~、まぁ でも 勝負の世界は非情ひじょうって言うしな……。
   敵の弱点を徹底して突くってのも ひとつの戦術か……。
   
   
   まぁいいや、中身なかみはともかく、ようやく中日なかび初勝利はつしょうりってわけか。

関取:いえ、とどめのりをらわせようとしたところ、相手がサッと けまして。
   そのせいでころんで負けました。

棟梁:え!?負けたの!?

関取:はい。まったく卑怯ひきょうな相手で。

棟梁:卑怯ひきょうなのはオメエだろ!
   
   なんだよ、ケガした奴にも勝てなかったのかよ、情けねえなぁ……。
   
   六日目むいかめはどうだった?

関取:はい。その日の相手というのが、もと 銀行員というわりだねで。

棟梁:もと 銀行員の力士りきし
   
   まぁともはなって力士りきしもとは教師だったし、
   銀行員が力士りきしになっても不思議じゃねえか……。
   
   で、どうだった?

関取:はい。銀行員だけに、引き落としで負けました。

棟梁:何うまいこと言ってんだよ。
   また負けてんじゃねえかよ。
   
   七日目なのかめは?

関取:はい。その日の相手というのが、もと 酒屋ざかやの店員というわりだねで。

棟梁:またわりだねかよ。
   
   で、どうだった?

関取:はい。 酒屋ざかやだけに、つきだしで負けました。

棟梁:いいんだよ うまいことは!
   
   八日目ようかめは!

関取:はい。その日の相手というのが、もと 野球選手というわりだねで。

棟梁:もと 野球選手?

関取:はい。ピッチャーをやってたそうですが、
   コントロールが悪くて フォアボールばかり出してしまうので、
   野球には見切りをつけて、力士りきしになったそうで。

棟梁:へえ。
   
   なんかオチが読めた気もするけど……。
   
   どうだったんだ?

関取:はい。押し出しで負けました。

棟梁:やっぱりな!そうだろうと思ったよ!
   
   九日目ここのかめは!

関取:はい。その日の相手というのが、上方かみがた相撲界すもうかいきってのプレイボーイ、
   性欲せいよく旺盛おうせいにくしょくけい力士りきしで。

棟梁:なんだよそれ、どんな相撲取すもうとりだよ。
   
   で、どうだったんだ?

関取(頬を赤らめて)
    はい。気づいたら 押し倒されてました

棟梁:やかましいわ!
   ベッドにでも 押し倒されたのか!
   
   
   おめえ力士りきしだよな?噺家はなしかじゃねえよな?
   何なんだよ このおお喜利ぎりみてえなのは!
   
   
   もういいよ!十日目とおかめ
   千秋楽せんしゅうらくはどうだったんだよ!

関取:はい。ついでに負けました。

棟梁:ついでって何だよ!
   ついでに負けてんじゃねえよ!
   
   
   なんだよ、結局 全部 負けてんじゃねえか!
   
   オウ、おめえ最初に何て言ったよ!
   「勝ったり負けたり」、そう言ったよな!
   それが今こうやって聞いてみりゃ どうだ、
   十日間とおかかん 負けっぱなしじゃねえか!
   
   どういうことだ!

関取:はい。ですから、むこうが勝ったり こっちが負けたり。
   
   勝ったり 負けたり。

棟梁:なんだそりゃ!
   おめえ力士りきしじゃなくて ペテンだよ それじゃ。
   
   なんだよ、ちったぁ活躍したかと思ってたのに……。
   
   それじゃ なにか、おめえ 負けっぱなしで ノコノコ帰って来たってのか?

関取:いえ、このあときょうのほうへ花相撲はなずもうに参りまして。
   
   お陰様かげさまで、こちらではつちつかずでした。

棟梁:つちつかず!?ホントかよ!?

関取:はい。

棟梁:オイオイすげえじゃねえか!
   
   いや~、おめえは話上手はなしじょうずだねえ。
   先に悪い話をしておいて、あとから いい話をする。
   そうすりゃ いい話がグッと引き立って、聞いてるほうも気分が良くなるってもんだ。
   
   オウ、つちつかずってことは、全勝なんだな!

関取:いえ、風邪かぜをひいて、全日程 宿やどで寝ておりました。

棟梁:なんだよ!土俵どひょうに上がってもねえのかよ!

関取:はい。ですからつちつかずで。

棟梁:うるせえよ!
   不戦敗ふせんぱいじゃねえかよ!
   
   なんだよ、結局1つも勝ってねえじゃねえかよ……。
   
   オウ、おめえ 自分で情けねえと思わねえのか?
   よく そんなんで 相撲取すもうとりなんか やってるな。

関取:はい。こんな自分が つくづくイヤになりまして、上方かみがたからの帰り、
   親方に、相撲すもうを辞めて故郷くにに帰りたいと 申し出まして。

棟梁:え!?そうだったのか!?

関取:はい。そうしましたら親方は、辞めるな と言って めてくれました。

棟梁:めた!?オエメを!?
   
   へえ~~ すごい親方だねぇ。
   俺だったら絶対 めねえよ。
   
   オウ お前さんよぉ、ありがたく思わなくちゃいけねえよ?
   そんだけ負けっぱなしの お前さんをめるってのは、
   なんか見所みどころがあると思ってくれてる証拠じゃねえか。

関取:はい。まことに ありがたいことで。
   
   安易あんいに辞めると言った自分を 親方は
   こんこんとしかってくださいまして。
   
   おかげで、自分が 親方から どれだけ重宝ちょうほうされているか、
   みて分かりました。

棟梁:へえ~~、何て言ってしかってくれたんだい?

関取:親方は おっしゃいました。
   
   「馬鹿野郎。辞めるなんて言うんじゃない。
    お前が辞めてしまったら、明日あしたから誰が ちゃんこを作るんだ」

棟梁:オイオイオイオイ。
   そりゃオメエ、ちゃんこばんとして重宝ちょうほうされてるだけじゃねえか……。
   なんだよもう……力士りきしとして重宝ちょうほうされなきゃダメだろ……。
   
   あのなぁ、相撲すもう 続けるのは いいと思うし、俺も応援するけどよ、
   オメエ もうちょっと どうにかしねえと いけねえぞ?

関取:はい。自分でも このままじゃ いけないと思いまして、
   来場所から 心機一転、四股名しこなを変えて頑張りたいと思います。

棟梁:四股名しこなを?
   
   なるほど、そりゃいいかもしれねえな。
   昔から 四股名しこなを変えて強くなった力士りきしは いっぱい いるんだ。
   
   何て名前にするんだい?

関取:はい。"大安売り"と改めます。

棟梁:大安売り!?
   
   またみょうな名前だなぁオイ。
   全然 力士りきしらしくねえじゃねえか。
   
   なんでまた 大安売り なんて名前にするんだ?


関取:はい。こうなったら 誰にでも どんどん まけてやります



おわり

その他の台本                 


参考にした落語口演の演者さん(敬称略)


三遊亭歌武蔵
桂歌蔵
鈴々舎馬るこ
桂文枝(6代目) ※上方落語
桂米紫(4代目) ※上方落語


何かありましたら下記まで。
kurobekio@yahoo.co.jp

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