声劇台本 based on 落語 「
【書き起こし人 註】
古典落語をベースにしていますが、あくまでも"声劇台本"として作成しています。
なるべく声劇として演りやすいように、元の落語に様々なアレンジを加えている場合があります。
アドリブ・口調変更・性別転換 等々OKです。
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<登場人物> <配役>
ここから本編
棟梁:(往来を歩いていると、顔なじみの関取を見かける)
関取:お、これはこれは、誰かと思えば 棟梁:いやあ、久しぶりじゃねえか。
関取:はい。親方と一緒に 棟梁: 関取:はい。お 棟梁:そうかい!
関取:ごっつぁんです。
棟梁:お前さんはエライねえ。
関取:ごっつぁんです。 棟梁:で?勝ち負けはどうだったんだい? 関取:はい。無我夢中で 取ってきましたが、勝ったり負けたりでした。 棟梁:エライ!
関取:ごっつぁんです。 棟梁:オウ、その 勝ったり負けたりをよ、 関取:はい。なにしろ 棟梁:負けちゃったのか……。
関取:はい。今日こそは負けられん、 棟梁:いいねえ いいねえ。
関取:うっちゃりで負けました。 棟梁:ええ……うっちゃられたのかよ……。
関取:はい。今日こそは負けられん、 棟梁:大丈夫か?また うっちゃられたんじゃ ねえだろうな? 関取:いえ、うっちゃる 棟梁:いいねえ!
関取: 棟梁:何やってんだよ……。
関取:はい。今日こそは負けられん、 棟梁:いや それ もういいよ。
関取:はい。得意の 棟梁: 関取:はい。 棟梁:ええ~ホントかい!
関取:はい。その証拠に、自分も、気付いたら 棟梁: ―― え??
関取:はい。 棟梁:ちょっと待てよ!
関取:はい。得意の 棟梁:そっから記憶ないの?
関取:はい。 棟梁:なんだよ だらしねえなぁ……。
関取:はい。 棟梁:ケガ? 関取:はい。左の足首を骨折したらしく、 棟梁:そんな状態で 関取:はい。自分も 相手が気の毒で 気が進まなかったのですが、
棟梁:まあ、勝負の世界だからな。
関取:はい。 棟梁:おいおいおいおい!
関取:はい。苦痛に顔を 棟梁:ほらみろ かわいそうに……。
関取:はい。まだ しぶとく立ってますんで、
棟梁:おいおい!もう 関取:いえ、とどめの 棟梁:え!?負けたの!? 関取:はい。まったく 棟梁: 関取:はい。その日の相手というのが、 棟梁: 関取:はい。銀行員だけに、引き落としで負けました。 棟梁:何うまいこと言ってんだよ。
関取:はい。その日の相手というのが、 棟梁:また 関取:はい。 棟梁:いいんだよ うまいことは!
関取:はい。その日の相手というのが、 棟梁: 関取:はい。ピッチャーをやってたそうですが、
棟梁:へえ。
関取:はい。押し出しで負けました。 棟梁:やっぱりな!そうだろうと思ったよ!
関取:はい。その日の相手というのが、 棟梁:なんだよそれ、どんな 関取:(頬を赤らめて)
棟梁:やかましいわ!
関取:はい。ついでに負けました。 棟梁:ついでって何だよ!
関取:はい。ですから、むこうが勝ったり こっちが負けたり。
棟梁:なんだそりゃ!
関取:いえ、この 棟梁: 関取:はい。 棟梁:オイオイすげえじゃねえか!
関取:いえ、 棟梁:なんだよ! 関取:はい。ですから 棟梁:うるせえよ!
関取:はい。こんな自分が つくづくイヤになりまして、 棟梁:え!?そうだったのか!? 関取:はい。そうしましたら親方は、辞めるな と言って 棟梁: 関取:はい。まことに ありがたいことで。
棟梁:へえ~~、何て言って 関取:親方は おっしゃいました。
棟梁:オイオイオイオイ。
関取:はい。自分でも このままじゃ いけないと思いまして、
棟梁: 関取:はい。"大安売り"と改めます。 棟梁:大安売り!?
関取:はい。こうなったら 誰にでも どんどん まけてやります。
・
?歳。
大工の棟梁(とうりょう)。
相撲好きで、関取の玉双(たまふたつ)を贔屓にしている。
・
?歳。
おすもうさん。
一人称は「自分」。
・棟梁:♂
・関取:♂
【ちょっと難しい言葉】※クリックすると開いたり閉じたりします(ブラウザによっては機能しません)
組織や仕事を束ねる中心人物。落語では大工の親方を指して言う場合が多い。
おすもうさんが使う隠語で「ありがとうございます」の意味。「ごちそうさまです」が訛ったんだとか。
京都付近。関西地方。
大相撲で、力士の番付を決めるための正式な場所。現在は年に6回だが、昔は年に2回だったり4回だったりした。
ここでは、大相撲で 行事が持つ「軍配うちわ」のこと。
大相撲で、取組開始の制限時間が来ると、行事は取組開始の合図として軍配うちわを裏返し、力士に取組を始めさせる。
相撲の決まり手の一つ。突きや押しの攻防の中で、体を開いて相手の肩や背中をはたいて倒す技。
「差す」とは 自分の手を相手の脇の下に入れること。「右差し」は自分の右手が相手の左脇に入っている状態。
相撲の決まり手の一つ。相手と組んで体を密着させ、前進して相手を土俵外に出す技。
相撲の決まり手の一つ。俵際まで寄せられた力士が、腰を落とし体を捻って相手を土俵の外へ投げるもの。
相撲で、相手を土俵ぎわに追い詰めながら勢い余って自分から土俵外に足を出し、負けになること。
力士の控え室。
相撲の技の一つ。立ち合いの際、相手の足首あたりを強く蹴り、手をたぐって倒す技。漢字で書くと「蹴手繰り」。
同種の人の集団の中で、普通の人とは違った特色や経歴をもつ人。
かつて立浪部屋に所属していた元 力士。最高位は東小結。元 高校教師という異色の経歴が話題になった。
相撲の決まり手の一つ。相手の胸や顔を掌で突いて土俵の外に出す技。
相撲の決まり手の一つ。片手または両手を相手の脇の下や胸などに当てて押しあげ、土俵の外に出す技。野球では、満塁からの四死球で得点が入ること。
大相撲や演劇など、興業の最後の日。
ここでは京都のこと。
本場所以外に、臨時に興行する相撲。勝敗が番付等に反映されない。
負けなしということ。
相撲部屋で力士が作ったり食べたりする料理全般を「ちゃんこ」と呼ぶ。鍋だけじゃないんですねえ。
大相撲で、力士の土俵上での名前。もともとは「醜名」と書いたんだとか。
お?ありゃあ、
オーウ、
いつも
長いこと見なかったけど、どうしてたんだい?
先日、江戸へ戻ってまいりました。
ああ!そういや
え!それじゃ お前さん、
すげえじゃねえか、
自分のような
俺は お前さんの そういう
「
なかなか言えるもんじゃねえよ。
きちんと 立てる所を立てる。いい心がけじゃねえか。
ますます
何がエライって、お前さんの その正直な所さ。
デタラメ言ったって こっちは分からねえんだ。
全部勝ちましたって言われりゃあ、こっちは
おめでとう!ってんで
それを
正直でいいじゃねえか。
ますます気に入ったぜ。
はたき込みで負けました。
まぁしょうがねえよ。
まだ
気にしちゃ いけねえよ。
相手のマワシを取って 得意の
頭を付けて グッグッグッグッと、
まあまあまあ、気にしちゃいけねえよ、そういうことも あらぁ。
"
得意の
じゃ今度こそ、
また負けちゃったのかよ……。
こちとら江戸っ子だ。
また
ものすごい
いやぁ信じられねえなあ!
あんな
え、なに?
もしかして ―― 、
お前さんが
相手の
で、目が覚めたら
こっちの
逆に
それを まともに
一発で
じゃ
たいそう痛々しい姿でした。
休みゃ いいじゃねえか……。
どんな相手にも
正々堂々と勝負することにしました。
相手だって それを承知で
で、どうなった?
思いっきり
オメエ ひでえ奴だな!
何が正々堂々だよ……。
相手 骨折してんだろ?
わざわざ そこ狙わなくたって、普通の
折れた足
で、どうなった?
とどめとばかりに 足首めがけて もう1発
ん~、まぁ でも 勝負の世界は
敵の弱点を徹底して突くってのも ひとつの戦術か……。
まぁいいや、
そのせいで
なんだよ、ケガした奴にも勝てなかったのかよ、情けねえなぁ……。
まぁ
銀行員が
で、どうだった?
また負けてんじゃねえかよ。
で、どうだった?
コントロールが悪くて フォアボールばかり出してしまうので、
野球には見切りをつけて、
なんかオチが読めた気もするけど……。
どうだったんだ?
で、どうだったんだ?
はい。気づいたら 押し倒されてました。
ベッドにでも 押し倒されたのか!
おめえ
何なんだよ この
もういいよ!
ついでに負けてんじゃねえよ!
なんだよ、結局 全部 負けてんじゃねえか!
オウ、おめえ最初に何て言ったよ!
「勝ったり負けたり」、そう言ったよな!
それが今こうやって聞いてみりゃ どうだ、
どういうことだ!
勝ったり 負けたり。
おめえ
なんだよ、ちったぁ活躍したかと思ってたのに……。
それじゃ
お
いや~、おめえは
先に悪い話をしておいて、
そうすりゃ いい話がグッと引き立って、聞いてるほうも気分が良くなるってもんだ。
オウ、
なんだよ、結局1つも勝ってねえじゃねえかよ……。
オウ、おめえ 自分で情けねえと思わねえのか?
よく そんなんで
親方に、
へえ~~ すごい親方だねぇ。
俺だったら絶対
オウ お前さんよぉ、ありがたく思わなくちゃいけねえよ?
そんだけ負けっぱなしの お前さんを
なんか
こんこんと
おかげで、自分が 親方から どれだけ
「馬鹿野郎。辞めるなんて言うんじゃない。
お前が辞めてしまったら、
そりゃオメエ、ちゃんこ
なんだよもう……
あのなぁ、
オメエ もうちょっと どうにかしねえと いけねえぞ?
来場所から 心機一転、
なるほど、そりゃいいかもしれねえな。
昔から
何て名前にするんだい?
また
全然
なんでまた 大安売り なんて名前にするんだ?
おわり
参考にした落語口演の演者さん(敬称略)
三遊亭歌武蔵
桂歌蔵
鈴々舎馬るこ
桂文枝(6代目) ※上方落語
桂米紫(4代目) ※上方落語
何かありましたら下記まで。
kurobekio@yahoo.co.jp