声劇台本 based on 落語 「
【注意】
声劇用に大きくアレンジしています。元の落語「雑俳」とはかなり違っています。
ですので、本式の落語用のテキストとしては向かないかと思います。ご注意ください。
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<登場人物> <配役>
ここから本編
八五郎:ご隠居さーん、こんちはァ。 ご隠居:おお、誰かと思ったら 八五郎:へい、じゃ遠慮なく。 ご隠居:このところ 顔 見せなかったねぇ。忙しかったのかい? 八五郎:そうなんスよ。ここんとこ、仕事が 立て込んじまって。 ご隠居:そうだったのかい。
八五郎:まぁそうスね。
ご隠居:おや、それは嬉しいねえ。
八五郎:お、ご隠居もですか。
ご隠居:調子が良くないかい? 八五郎:良くねえスねぇ。
ご隠居:なんだいそりゃ。 八五郎:おかげで ここんとこ、
ご隠居:何か悪い物でも食ったんじゃないのかい?
八五郎:そうなんスよ。 ご隠居:どうして。 八五郎:下らねえ顔だから。 ご隠居:やかましいよ。
八五郎:あ、こりゃどうも。
ご隠居:あのねぇ、おまえさんのほうで 八五郎:あ、そうなんスか。
ご隠居:まぁ、そこそこ いい お茶を出してるつもりだよ。 八五郎:そうっスよねぇ。どうりで ご隠居:ほう、わたしの 八五郎:それがね、
ご隠居:なんだい、その「知れねえ 知れねえ」っていうのは。 八五郎:いや、ですからね、
ご隠居:おいおいおいおい。誰が泥棒だよ。
八五郎:知ってますよ。だから言ってやったんスよ。
ご隠居:ちょちょちょちょ!
八五郎:え?まだ ご隠居:そうじゃないよ!泥棒なんて したことないよ!
八五郎:ああ なるほど そうだったんスか。
ご隠居:そんなことはないよ。
八五郎:へえ、ご隠居にも ご隠居: 八五郎:え? ご隠居: 八五郎:(引いてる)
ご隠居:そうだよ。好きでやってるんだから 八五郎:(困惑)ええ……、あんなもん、
ご隠居:そうじゃないよ!
八五郎:ハイク? ご隠居:知らないかい? 八五郎:ああ、知ってる知ってる!
ご隠居:変な 八五郎:そうなんスよ。
ご隠居:ほう、 八五郎:いや、「おめえも やらねえか」って誘われたんスけどね、
ご隠居:へえ。
八五郎:そうスねえ。
ご隠居:どんな 八五郎:えーと、どんなのだったかなぁ……。
ご隠居:はァ? 八五郎:そしたら みんなが、「いいねえ、うまいねえ」なんて言って。 ご隠居:どこが うまいんだよ。
八五郎:あ、そうスか。
ご隠居:これはつまり、初雪が 八五郎:はあ、なるほどねぇ。
ご隠居:ああ、いかにも。
八五郎:オヤっさんに いくつか教えてもらって 覚えたんスよ。
ご隠居:ああ、おまえさんが言いたいのは、
八五郎:そう、それ!
ご隠居:『 八五郎:そう、それ!
ご隠居:『とんぼ 八五郎:そう、それ!
ご隠居:おまえさん さっきから 八五郎:そう、それ!
ご隠居:何が風流だよ、ひとつも マトモに覚えてないじゃないか。
八五郎:まぁ やってみたいんスけどねぇ……
ご隠居:それが意外と そうじゃない。
八五郎:そういうもんスか?
ご隠居:そりゃ当たり前じゃないか。 八五郎:いや だって 素直にって。 ご隠居:素直すぎるよ。
八五郎:もう1つの決まり? ご隠居:そう。 俳句にはね、 八五郎:キゴ?なんスか キゴって。 ご隠居:季節を表す言葉だな。
八五郎: ご隠居:なんだい 「次は」ってのは。
八五郎:で、あやめ、 ご隠居:ボウズ!? ボウズなんて 八五郎:バレましたか。 ご隠居:まぁ 八五郎:へえ。じゃボウズは ご隠居:おまえさんがボウズと言ってる 八五郎:ああ、あれ ススキだったんスか。
ご隠居:それじゃ 八五郎:そうスねえ……。
ご隠居:ほう、「 八五郎:『 ご隠居:おいおい!そりゃオイチョカブじゃないか!
八五郎:でも なんか 分かってきましたよ。
ご隠居:そうかい?
八五郎:おもしろそうスねぇ。いいスよ。 ご隠居:それじゃ まずは、「初雪」で いこうか。 八五郎:「初雪」ね。
ご隠居:そのまんまだねぇ。 八五郎:だから 見えるまま、素直に ご隠居:素直は いいんだけど、そのまますぎて 八五郎:どういう意味スか その俳句。 ご隠居:ここで言う「 八五郎:そうスかねぇ。あっしは もっとドカッと ご隠居:ずいぶん 八五郎:いませんかねぇ? ご隠居:いないんじゃないかなぁ。
八五郎:どういう意味スか それ? ご隠居:初雪が積もった日に お隣さんを訪ねる。
八五郎:そうスかねぇ。
ご隠居:なにを気取ってんだい。
八五郎:持ってるワケねえじゃねえスか。
ご隠居:ま、そんなとこ だろうねえ。
八五郎:なるほどねぇ……。
ご隠居:そりゃ ただの 八五郎:ん~~、そうスねえ……。
ご隠居:だから 八五郎:なるほど キレイだねェ。
ご隠居:誰のツラが 汚いんだよ。
八五郎:ん~、なかなかねェ……。
ご隠居:そんな事は ないよ。
八五郎:6才!! そいつは すごいスね!! ご隠居:だからね、年寄りだから出来る、若いから出来ない という事は無いんだ。
八五郎:(考える)ん~~~……
ご隠居:お!できたかい?
八五郎:『初雪や ご隠居:オイオイ!それじゃ 八五郎:失礼な。
ご隠居:知ったふうなこと 言うんじゃないよ!
八五郎: ご隠居:妙なことは知ってんだねえ……。
八五郎:うまいこと ご隠居:まったく……。
八五郎:ん~~~。
ご隠居:コラコラコラ。欲を出すんじゃないよ。
八五郎:だって 思ったことを 素直に ご隠居:それにしたって、あまりにも 八五郎:欲を離れるかぁ……それじゃあ……、
ご隠居:欲は離れたけれども(汗)。
八五郎:どういう意味スか? ご隠居:一面 まっ白な 八五郎:なるほど、色の対比ねえ。
ご隠居:お、どんなのだい? 八五郎:『初雪や いちばん目立つ インド人』。 ご隠居:コラコラコラ!そういうの よくないから!
八五郎:インド大使館から 怒られたらしいスね。
ご隠居:らしいね。ホントかどうか知らないけど。
八五郎:ん~、それじゃあ……、
ご隠居:コラコラコラ!だから!
八五郎:ご隠居も いろいろ よく知ってますねぇ。
ご隠居:まあ 長く生きてるからね。
八五郎:ぼたんね。
ご隠居:ん、八五郎くん。 八五郎:『洋服の 胸に大きな ボタンかな』。 ご隠居:そのボタンじゃないよ。花の 八五郎:つばきね。
ご隠居:八五郎くん。 八五郎:『 ご隠居:汚いねぇ。その つばきな 八五郎:『くちなしや 鼻から下は すぐにアゴ』。 ご隠居:バケモンじゃないか!
八五郎:『 ご隠居:そりゃJRの駅じゃないか!
八五郎:『 ご隠居:アパートか何かかい……?トキワ荘みたいな……?
八五郎:『 ご隠居:もういいよ!
八五郎:『 ご隠居:こわいよ!
八五郎:『 ご隠居:またJRの駅じゃないか!
八五郎:『ガマグチを 忘れて ご隠居:なんかちょっと うまいな!
八五郎:『 ご隠居:いや、あのね―― 八五郎:『色気 出る 女ざかりは ご隠居: 八五郎:冗談スよ。
ご隠居:お?珍しく いい 八五郎:『 ご隠居:結局 八五郎:なんスか?その カサヅケってのは? ご隠居:「 八五郎:どういう意味スか?「さあ ご隠居:「さあ大変だ、どうしよう」というような意味だな。
八五郎:なるほど、そりゃ さあ ご隠居:他にも、こんなのは どうかな。
八五郎:ああ、そりゃ ヤベエっスね。
ご隠居:だろう?
八五郎:そうスねえ。
ご隠居:あぁ 八五郎:なんスか それ? ご隠居:「りん」で始まって 「りん」で終わる 言葉遊びだ。
八五郎:なるほど。そういうふうに やるんスね。
ご隠居:まだある。
八五郎:うまいねぇ。
ご隠居:コラコラ、かわいそうじゃないか。
八五郎:さすが ご隠居、キレイだねえ。
ご隠居:おお、いいねえ。花が散ったところへ、
八五郎:『 ご隠居:こらこら!泥棒するんじゃないよ。
八五郎:『リンリンと ご隠居:お?いいじゃないか。
八五郎:『タダで食わせろ アカン ベロリン』。 ご隠居:やっぱり いじましいじゃないか!
八五郎:なるほど、じゃ あっしも 暮らしの中から ひとつ。
ご隠居:こわい 八五郎:いや いいんスよ。
ご隠居:ああ これかい?
八五郎:テンジャ? なんスか テンジャって? ご隠居:まあ ひらたく言えば、
八五郎:ああ、それが その ご隠居: 八五郎:へえ。
ご隠居:ああ、かまわないよ。
八五郎:点は どんなふうに付けるんスか? ご隠居:歌の 八五郎:じゃ いちばん いいのは「 ご隠居:そういうことだ。
八五郎:へい。
ご隠居:これはね、「 八五郎:すげえじゃねえスか!
ご隠居:ん~、悪くはないけどねぇ、
八五郎:ええ~、かわいそうじゃねえスか。
ご隠居:そうはいかないよ。
八五郎:えーと 次は……
ご隠居:うんうん、かわいらしい歌だね。
八五郎:じゃ ご隠居:これも まあ 八五郎:えーダメっすか! ご隠居: 八五郎:キビしいんスねぇ……。
ご隠居:これは おもしろいねえ。
八五郎:おお、すげえ! これ ご隠居:ん~、これも まだ 八五郎:マジすか! キビしすぎないスか!? ご隠居:そんなことはないよ。
八五郎:えー、次は……
ご隠居:きれいな歌だねえ。
八五郎:いいっスよね! ご隠居: 八五郎:なんでだよ!テメ いい加減にしろよ このクソジジイ! ご隠居:ちょちょちょ 八五郎:あ、すいません、つい興奮して……。 ご隠居:なんで おまえさんが興奮するんだよ……。
八五郎:そんなもんスかねぇ……。
ご隠居:考えた?おまえさんが? 八五郎:ええ。もちろん、 ご隠居:どうだかねえ。 八五郎:いきますよ?
ご隠居:なになに、
・八五郎(セリフ数:126)
?歳。
町内の間抜け男。天然おバカ。
通称「八っつぁん(はっつぁん)」
・ご隠居(セリフ数:127)
?歳。初老~老年。
町内の物知り隠居。
落語に出てくる この手のご隠居は 知ったかぶりをする人物も多いが、
この噺のご隠居は ちゃんとした知識・見識を持っているようです。
・八五郎:♂
・ご隠居:♂
【ちょっと難しい言葉】※クリックすると開いたり閉じたりします(ブラウザによっては機能しません)
不思議なめぐり合わせの縁。人と気持ちが通じ合うのも、通じ合わないのも、不思議な縁によるものだということ。
トイレのこと。
趣味として楽しむこと。また、その楽しみ。
発句・連句の総称。
連歌・連句の第1句。
俳句を作って互いに発表する会。
詩文や書画などの風流に親しむ人。
1644~1694。江戸前期~中期の俳人。『おくのほそ道』で有名。
1661~1738。江戸中期の俳人。
1703~1775。江戸中期の俳人。加賀千代。
※「女(じょ)」は名の一部ではなく女流歌人の名に添える接尾辞。
小林一茶(1763~1828)。江戸後期の俳人。『おらが春』で有名。
花札賭博の一種。手札とめくり札を足した数の末尾が9またはそれに最も近い数を勝ちとする。
ここでは、灸をすえる箇所の一つ。ひざがしらの下、外側の少しくぼんだ所。
イタリア発祥のファッションブランド。靴が有名。
1634~1698。江戸時代の女流歌人・俳人。氏名は「田 ステ (でん すて)」。
「女(じょ)」は名の一部ではなく女流歌人の名に添える接尾辞。
かつて日本テレビ系列で放送されていた朝の情報番組。
アントン・ウイッキー。スリランカ出身のタレント。
『ズームイン!!朝!』にて「ウイッキーさんのワンポイント英会話」というコーナーを担当していた。
1949~。日本の歌手・俳優・タレント。代表歌は『愛のメモリー』。
歌手の松崎しげる氏の肌の色を表現すべく作られた絵の具。
『トリビアの泉』という番組がきっかけで、サクラクレパスの協力のもと作られた。
1716~1784。江戸中期の俳人・画家。
花の椿もありますが、「唾液」・「つば」の意味もあります。
全長2mを超える大薙刀に対し、全長1.7mほどの小ぶりの薙刀。
精練した生糸で織った、厚くてつやのある絹織物。
布面がなめらかで、つやがあり、縦糸または横糸を浮かした織物。サテンとも。
木綿や羊毛などを平織りにした薄手の織物。
鈴をつけた屋台を担ぎつつ、江戸の夜の街を流したそば売り。
嫉妬、やきもち。また、やきもち焼きの人。
木炭を燃料にする小型のこんろ。網をのせて その上で餅を焼いたりする。
『古今和歌六帖(こきんわかろくじょう)』の略。平安時代に編纂された私撰和歌集。
深い山の中の道。
まぁまぁ お上がりよ。
まぁ 仕事が無くて 食うに困るよりは いいじゃないか。
で、今日は久しぶりに 仕事が早く終わったんで、
ご隠居の顔見て、ムダ話でもしようかと思ってね。
おまえさんとも長い付き合いだ。
性格も違うけど、不思議とウマが合うからねぇ。
おまえさんと たわいもない話をするのは、
わたしにとっても 楽しみの1つなんだ。
ここ数日 おまえさん 来なかったろ?
妙に静かで 物足りない気がしてねぇ。
やっぱり
どうも調子が良くないみたいだ。
いや あっしもね、
腹の調子が良くねえ。
それで? わたしの顔を見たら、その
おまえさんの言うことが くだらないよ。
お、
よいしょ(と、お茶を淹れる)。
(八五郎に湯呑みを差し出して)
さ、お茶が入ったよ。
(吹いて冷ます)ふーっ、ふーっ。
(飲む)ずずっ。
あー、うまい!
うまい
いや
ご隠居んとこの
安くないでしょ この
それを そうやって
悪い お茶を出してるのを 皮肉られてるみたいじゃないか。
じゃ やっぱりこれ、いい お茶なんスか?
あ、そうだ。いい お茶で思い出したんスけどね、
今日 仕事仲間と だべってたら、ご隠居の
まぁ「
あまり
で、どんなことを言ってたんだい?
「あの
仕事もせずに 毎日ブラブラして、
そのくせ いい着物を着て
結構な暮らしをしてるところを見ると……、知れねえぞ」
って1人が言ったら、みんなも、
「ああ、知れねえ 知れねえ」って言ってね。
「泥棒かも知れねえ」
おまえさん、よくウチに出入りしてるんだから 知ってるだろ?
「オウおめえら なんてこと言うんだ!ご隠居が泥棒だぁ?
ふざけたこと ぬかしてんじゃねえ!ご隠居はなぁ……
もう足 洗ったんだ」
そんなこと言ったのかい!?
冗談じゃないよ!
あのねぇ、今は たしかに 仕事はしてないけど、
昔は わたしだって
一生懸命 働いて 店を持って、
それからまた一生懸命 働いて 店を大きくして、
そして息子夫婦に店を
今こうやって隠居してるんだ。
働いてた頃の
店を継いだ息子夫婦から 米も送ってもらってるから、
仕事をしてなくても 生活には困らないんだよ。
でも ご隠居、それじゃ毎日
仕事は無いが、
え……。それが、ご隠居の
好きでやるとか やらねえとかの問題なんスか……?
よく聞きますけどねぇ、ご隠居くらいの
そりゃ 年寄りの
わたしゃ まだ そこまで
その
『
『
まぁでも おまえさん、全く知らないわけじゃないみたいだね。
こないだね、
その 俳句ってヤツっすか?それを作る会を やってましてね。
あっしには ちょいと難しそうだったから、
なにか いい
ああ、そうだそうだ、
『
梅の足跡 犬の鼻?
なんだい 梅の足跡って。梅に足跡があるかい。
それを言うなら、
『初雪や 犬の足跡 梅の花』だろ?
初雪や、犬の足跡、梅の花……。
どういうことスか?
その足跡の形が まるで梅の花のようだと言うんだな。
犬の足跡に 梅の花を、鳥の足跡に
なんか、昔の人が
いにしえの
数多くの
えーとね、えーと……
あ、そうだ!
古い池にね、あの、カエルか何かが飛び込んで、
音が したとか しねえとか、そんな俳句、あるんでしょ?
『
それからね、えーと、
虫が鳴くから 捨てらんねえ みてえな俳句。
それからね、えーと……、
トンボを
ずいぶん遠くまで行っちゃって、
それからね、えーと、
ガキんちょがね、お月さんを取って来てくれなんて
『
これは
いやぁ、風流だなァ。
まぁ こうやって
自分で こしらえて
どうだい?おまえさんも ひとつ
むずかしそうなんスもん。
見えるまま、感じるまま、
素直に 五・七・五で
それなりに
素直にねぇ……。
それじゃぁ……、
『朝 起きて 顔を洗って メシを食う』。
ああ そうだ、忘れてた。
俳句には 五・七・五で
もう1つ決まりがあったんだ。
「初雪」とか「雪」なんてのは、冬を表す
正月なら「
じゃ次は
まぁ「
おまえさんにしては 花に詳しいと思ったら、
そりゃ
あれはススキだ。
なるほどねぇ。
なにか
よし!
それじゃ、「
いいじゃないか。
どう続ける?
カブになる』
意外と あっしにも できそうな気がしてきたなぁ。
じゃあ わたしが
それを入れて
う~ん……、
『初雪や そこらの屋根が 白くなる』。
たとえば、そうだな……
『初雪や せめて
これくらいは
だから「
つまり 初雪は、
ちょうどいい ということだ。
『初雪や キリンの首の もぐるまで』。
そこまで雪が
キリンなんて いるかい?
ありもしないこと
だいたい そんなに降らせたんじゃ、
やっぱり ほどほどに 降らせとくのが いいんだよ。
『初雪や
その程度の 積もり具合が、
けど、
言うことが みみっちいや。
あっしなら、こう いくね。
『初雪や フェラガモ
わざわざ 雪の日に 高い靴
だいたい おまえさん、フェラガモなんて持ってんのかい?
フェラガモなんて、こないだまで
カルガモの仲間だと思ってましたよ。
俳句に戻ろう。
こういうのはどうだい?
『初雪や
まぁ ご隠居の家には 庭があるから いいスけどねぇ……
『初雪や 俺んとこには 庭が
庭ぐらい、ウチのを貸してやるよ。
さ、ウチの庭を見て、そこに雪が積もってるのを想像して、
なにか
『初雪や
じゃ、ちょいと
『初雪や
おめえさん、そんな
よく そんなキレイな句が
おまえさんに ツラのこと 言われる
句の
さ、
これぐらい
まぁ何事も 「
やっぱり ご隠居ぐらい
オモムキやら フウリュウやら、
出て来ねえんじゃねえかなぁ。
たとえば、そうだな――、
「初雪」で言えば、こんな句がある。
『初雪や
これは、ステ
彼女は この句を、なんと6才のときに
*田 ステ女(でん・すてじょ)……江戸時代の女流歌人・俳人。
さ、おまえさんも ひとつ、挑戦してごらん。
案外、
(思いつく)オ!よし!
オマージュっスよ。
それに文字数も めちゃくちゃじゃないか。
だいたい なんだい、
だけど
あんまり雪の上に 足跡 残したりしないだろ……。
ていうか
見えるものから 感じること、思うことを 素直に
ホラ、雪で まっ白な
それを見て、何を感じる?どんなことを思う?
さ、
『初雪や これが塩なら 大もうけ』。
それの どこに
欲を離れなさい、欲を。
『初雪や 落ちてる
どうにも
もっと こう、
それを
たとえば もう1つ「初雪」で言えば、
『初雪や
狂うほどに
この色の対比が見事だろ?
(思いつく)
あ!じゃ こんなのは どうスか?
ていうか それ、昔「ズームイン
ウイッキーさんが
『あんた スリランカ人なんだから、「スリランカ人」で
じゃなくて!
もう
しかも こんな、いろいろと危ない句を。
(思いつく)
あ!こんなの どうスか?
『初雪や 松崎しげる よく目立つ』。
やめなさいって言ってるでしょうが!
まあ あの
ん~、これ以上「初雪」で やると、どんどん危ない方向へ行きそうだからなぁ……。
ちょっと別の
そうだな、「
『
これは
ハイ!(挙手)
おまえさん
じゃあ、「
『うぐいすの
ハイ!(挙手)
それじゃ 「くちなし」なんてどうだい?
口が無いから 口無しってんじゃないよ!
花のくちなしだよ!
じゃあ「
じゃあ「
じゃあ、「サルスベリ」。
花は やめよう。
じゃあ「
じゃあ「メジロ」なんてどうだい?
さっきは
もういいんだよ駅は。
じゃあ、「蛙(かわず)」なんてどうだい?
いや全然ダメだけど、なんかちょっと うまいな!
じゃあ「シジュウカラ」。
じゃ ちょいと
えー、
『
『
それから?
――まあ、
独特の発想というか、おもしろい句も いくつかあったし、
ま、そういうのが
ふむ、そうだねえ……、おまえさんの場合、
少し 遊び心のある
それじゃ ひとつ、
まあ
要は
この「
早い話が、最初の5文字が お題として 出されるから、
その
遊びだから、細かいことは気にせず、おもしろい句を作ればいい。
たとえば、『さあ、
この「さあ
こんな具合だ。
『さあ
渡し舟なんてのは 小さい物だが、
時には馬を乗せて 川を渡ることもある。
あんな狭い所で 馬が もよおしてごらん?
まわりは水で 逃げようがない。さあ
『さあ
相手は ハサミやカミソリ 持ってんだ。
だしぬけに 耳でも ザックリいかれちゃ かなわねえや。
ま、ざっと こんな具合だ。
どうだい?おまえさんも ひとつ
(思いつく)
あ!こんなの どうスか?
『さあ
自業自得って気もするけど……。
おまえさんも なかなか やるじゃないか。
じゃ 次は 「りん
まあ聞いたほうが早い。こんな具合だ。
『リンリンと
『
こりゃ おもしろそうだ。
『リンリンと
*綸子(りんず)・繻子(しゅす)……どちらも つやのある上質の織物。
じゃ あっしも ひとつ。
『リンリンと
*モスリン……薄手の毛織物。「赤毛のアン」にも粗末なモスリンのカーテンが出てくる。
しっかり稼いで いい着物 買ってやんなさい。
まあでも、おまえさんらしくて おもしろい
それじゃ わたしも もうひとつ。
『
あっしは こうだね。
『りんりんと リンゴや
すかさず 実を結ばせるとは、
続きが楽しみだね。
『りんりんと リンゴや
どうも おまえさんのは いじましいねえ……。
江戸の町を 流して歩く
あの
風流だねえ。
さあ どう続ける?
『リンリンと
そば
よし、「
『リンリンと
暮らしの ひとコマを
『りんりんと
じゃ次は――
(玄関先に誰かが来たようだ)
ん――?誰か来たみたいだ。
(八五郎に)
ちょっと待ってておくれ。(席を立つ)
(玄関のほうで。来客に)
はいはい、どなたですかな。
(お使いの小坊主さんのようだ)
おや、
ああ、先日の。「
点を付けてくれと。はいはい。
(紙束を受け取って)
ああ、これですね。
では、あずかって
また
はい、では ごくろうさまでしたね。
(使いの者は去る)
(座敷へ戻ってくる)
(八五郎に)
ああ
(ご隠居が紙束を持ってるのを見て)
ん?なんスか その
いや 実は わたしは、点者(てんじゃ)を していてね。
点を付ける人間だな。
これでも わたしは、
この
時々 近所の
また
先日も とある
それが いくつか出来たから 点を付けてくれということで、使いの子を よこしたんだ。
で、キョウカって なんです?
(紙束を指して)
それ、ちょっと見ても いいスか?
じゃ ちょっと 読み上げていってくれるかい?
わたしが点を付けていくから。
「
じゃ、最初のを読み上げてくれるかい?
えー なになに……
『
なんだこりゃ?ワケわかんねえや。
これ、いいキョウカなんスか?
『
という歌があってね。
それを もじりつつ、きちんと
なんか よく
じゃ これ、
これじゃあ まだ
まあ、
ケチケチしねえで、パーッと
じゃ 次 読んでくれるかい?
『ぽんぽんが 痛いと
これは どうスか?
それに、
じゃ 次。
えー、次は……
『
最後の「送り狼」が なんとも
それに 「
この程度じゃあ まだまだ
次。
『
さっきの「送り狼」の
「
じゃ今度こそ
ま、これぐらい 句の道・歌の道は
あ、じゃあ、あっしも ひとつ 考えたんで、
点 つけてくださいよ。
じゃ
さ、聞かせてごらんよ。
(咳払い)
えー、
『この
やや大きめの これは なんぞや』。
『この
やや大きめの これは なんぞや』
なるほど、これはテンだ。
※「天」と 動物の「貂(テン)」の洒落。
イタチも貂も イタチ科の動物で、見た目がそっくり。
一般的に、貂のほうがサイズが大きい。
その他の台本
三遊亭金馬(3代目)
三遊亭王楽
春風亭柳昇(5代目)
古今亭志ん朝(3代目)
古今亭今輔(6代目)
春風亭昇太
立川談志
橘家文蔵(3代目)
柳亭市馬