声劇台本 based on 落語 「
【書き起こし人 註】
古典落語をベースにしていますが、あくまでも"声劇台本"として作成しています。
なるべく声劇として演りやすいように、元の落語に様々なアレンジを加えている場合があります。
アドリブ・口調変更・性別転換 等々OKです。
ご利用に際してのお願い等
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観覧自体が無料であればかまいません。いわゆる「投げ銭システム」に代表されるような、リスナーから
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<登場人物> <配役> 【ちょっと難しい言葉】 ここから本編
八五郎:おい、おっかあ。 女房 :なんだい?おまえさん。 八五郎: 女房 :あら、どちらかへ お出かけかい?
八五郎:おう、ありがと。
女房 :初天神?あら いいじゃない。
八五郎:あん?なんで金坊が帰って来るのなんか 待たなきゃいけねえんだよ? 女房 :金坊も一緒に 連れてっておやりよ。喜ぶと思うから。 八五郎:金坊も一緒に!?やだよ。
女房 :しょうがないじゃない、子供なんだから。 八五郎:ダメダメ!せっかくの初天神なのに、
八五郎:金坊と一緒なんざ冗談じゃねえや。
源兵衛:あ、これはどうも、八五郎さん。 八五郎:ああ、こりゃどうも 金坊 :これはどうも、お 八五郎:金坊……。 源兵衛:いや、さっき坊やが お宅の ぬか 八五郎:あ、そうでしたか。すみませんねえ わざわざ。 金坊 :お 八五郎:あん?
金坊 :あれ?どこ行くか言えないの?
八五郎:バカか おめえは!んなワケねえだろ! 金坊 :天神様!?いいなぁ~!
八五郎:ダメだよ。 金坊 :なんでだよォ~。 八五郎:おめえ 天神様なんか行ったら、あれ買ってくれだの これ買ってくれだの うるせえからだよ。 金坊 :ええ~!言わないよぉ。
八五郎:ダメったらダメだよ! 金坊 :ちぇ~。お 八五郎:コラコラ、 源兵衛:いやいや、私は かまいませんよ。
八五郎:そうですか?どうもすいませんねぇ。
源兵衛:ええ、では。じゃ行こうか 坊や。 金坊 :うん!とびっきり おもしろい お話 してあげるね! 八五郎:ふぅ。まさか家 出て すぐに金坊に出くわすとは思わなかったぜ。
源兵衛:(遠くから)八五郎さーん。 八五郎:(立ち止まって)
源兵衛:(少し近づいて)八五郎さーん。 八五郎:ん?向こうから やって来んのは ―― 源兵衛:(走って来たので少し息切れ)
八五郎: 金坊 :お 八五郎:金坊じゃねえか!なんで来たんだよ! 源兵衛:あ、いや、八五郎さん。
八五郎:あ、やっぱりコイツ、 源兵衛:いや、あの、迷惑とは違うんですが ――
八五郎:ああ、我慢できねえくらい、つまらなかったんですね? 源兵衛:いや、その、逆で ―― 八五郎:逆? 源兵衛:おもしろすぎて ―― 八五郎:ハァ?
源兵衛:いや、それがですね、坊やの言うことには、
八五郎:オイ金坊!!おめえ なんて話 してんだよ!!
源兵衛:さっきの辺りまで聞いたところで おかみさんが
八五郎:そうでしたか ―― 。
源兵衛:ああ いえいえ。
八五郎:(源兵衛の背に)
金坊 :だから一緒に連れて行っとけば良かったでしょ? 八五郎:うるせぇよ。まさか あんな話されるとは思わなかったんだよ! 金坊 :じゃ初天神 行こっか♪ 八五郎:切り替え 早えな おめえは。
金坊 :分かったよ。 八五郎:ホントか?あれ買って これ買ってって言わねえか? 金坊 :言わないよ。 八五郎:約束するか? 金坊 :約束するよぉ。 八五郎:ようし。じゃあ連れてってやる。 金坊 :やったぁ♪お 八五郎:(ため息)心配だなぁ……。 八五郎:ふぅ、そろそろ着いたな。 金坊 :すごーい!人が いっぱい いるね! 八五郎:そうだな。はぐれねえようにしろよ。 金坊 :お店も いっぱい出てるね! 八五郎: ―― そうだな。 金坊 :おいしそうな物、いっぱい売ってるね! 八五郎: ―― あのな金坊、お 金坊 :わ、忘れてないよぉ。 金坊 : ―― 。
八五郎:なんだよ。 金坊 :今日のオイラさ、お 八五郎:ん?
金坊 : ―― 。
八五郎:なんだよ。 金坊 :今日のオイラさ、あれ買って これ買ってって言ってないでしょ? 八五郎:ん?
金坊 :エライでしょ? 八五郎:ああ、えらいえらい。 金坊 : 八五郎:ああ、 金坊 :その 八五郎:あぁ? 金坊 :だからさぁ、オイラがこんなに お 八五郎:はぁ?
金坊 :だからさぁ……、
八五郎:ほ~ら始まった!
金坊 :(ぐずり出す)
八五郎:ダメったらダメだよ! 金坊 :(ぐずる)そこを何とかさぁ……、
八五郎:ダメだって言ってんだろうが! 金坊 :(ぐずる)
八五郎:うるせえなあもう!!ちょっと一回 黙れ!
金坊 :(ケロッとして)
八五郎:近くに飴屋があったらの話だ! 金坊 :飴屋なら そこだよ。 八五郎:な!
金坊 :じゃ飴玉 買ってくれるんだね♪ 八五郎:わ、分かったよ……!
飴屋 :ヘイ いらっしゃい! 八五郎:こんなとこに店 出してんじゃねぇ! 飴屋 :いや無茶 言わないでくださいよ。
八五郎:うるせえバカヤロ。おかげで こっちは飴玉 買わされるんだ。 飴屋 :(金坊に)坊ちゃん、サンキュー! 八五郎:サンキューじゃねえよ!
飴屋 :へい、1 八五郎:(銭を出して)ホラ1 飴屋 :へい どうも。 八五郎:これ、いろんな色の飴玉あるけど、好きなやつ取っていいの? 飴屋 :へい、お好きなのを1つ 取っちゃってください。 金坊 :わぁー、どれにしようかなぁ。 八五郎:あー待て、おめえは手ェ出すな。
金坊 :えぇ~、赤い色の飴は ヤだよぉ。 八五郎:なんだよ、どれでも一緒じゃねえか。
金坊 :ん~、青色もなんかヤだなぁ。 八五郎:なんだよ、これもイヤなのかよ。ったく……
飴屋 :ちょっとちょっと お客さん!
八五郎:え、ダメなの? 飴屋 :当たり前でしょ!汚くて売りもんに ならねえじゃねえスか。
八五郎:なんだよ、分かったよ。
金坊 :はぁい。 八五郎:よーし、じゃ食わせてやるから、あーんしろ。 金坊 :あーん。 八五郎:ホラっ(と飴を金坊の口の中に入れる) 金坊 :あむっ。
八五郎:うめえか?よかったな。 金坊 :うん、おろっあん、あいあと。ちゅぱちゅぱ。
八五郎:ま、飴玉1つで おとなしくなりゃいいか。 金坊 :ほえにひえも、ふおいひおらえ。
八五郎:無理して しゃべらなくたっていいんだよ。
金坊 :まらまら いっふぁい おみえも あうああ。
八五郎:あんまりキョロキョロすんなってんだよ。
金坊 :あがッ!
八五郎:オイオイオイ、おめえ、男の子だろ?
金坊 :うっ、うっ、痛くて、泣いてんじゃ、ないやい。 八五郎:じゃ何なんだよ? 金坊 :お 八五郎:えぇ?落っことした?
金坊 :お 八五郎:じゃあ食っちまったんじゃねえか! 金坊 :だって……まだ 八五郎:んなこと言ったって しょうがねえじゃねえかよ。 金坊 :もっと味わいたかったのに……お 八五郎:うるせぇなぁ。悪かったよ。 金坊 :じゃあ お詫びにさ……おだんご買ってよ。 八五郎:あぁん?
金坊 :(ぐずり出す)
八五郎:うるせえよ!ダメったらダメなんだよ! 金坊 :なんだよ!お 八五郎:コラコラコラコラ!!やめろ!!
金坊 :もう言わないからさぁ……おだんご買ってよ。 八五郎:だーもぅ!分かったよ!
金坊 :だんご屋さん 目の前だよ。 八五郎:え? 団子屋:らっしゃい! 八五郎:うわビックリした!
団子屋:無茶 言っちゃいけませんよ。
八五郎:ふざけんじゃねえよ。
団子屋:(金坊に)
八五郎:グッジョブじゃねえよ!
団子屋:5 八五郎:けっこう取りやがるねぇ……。
団子屋:へい、どうも。
八五郎:あんこに決まってんだろ。
団子屋:へい、あんこですね。 金坊 :みたらしがいいなぁ。 八五郎:(だんご屋に)
団子屋:え、いいんですか? 八五郎:また 人さらいにされちゃ かなわねぇ。 団子屋:大変ですね。 八五郎:おめえグッジョブっつってたじゃねえか。 団子屋:(みたらしだんごを八五郎に手渡す)
八五郎:(受け取る)おう。 金坊 :わーっ、おいしそう!
八五郎:ああ待て待て。
金坊 :なんだよこれ! 八五郎:なんだよ うるせぇなあ……。
団子屋:え?
八五郎:あ、そうかい。
団子屋:ちょっとちょっと お客さん!
八五郎:いや、 団子屋:あんたが 八五郎:んな怒るなよ。
金坊 :わーい!ありがと! 八五郎: 金坊 :あ、そうだね。
団子屋:コラコラコラコラ!親子で何やってんですか!
金坊 :ふぅ、あー おだんご おいしかったぁ! 八五郎:へいへい そいつはよかったな。
金坊 :そんなこと言わないでよぉ。
八五郎:うるせえよ。
金坊 :(凧屋が目の前に)
八五郎:はぁ!?何言ってんだ!
金坊 :そんなこと言わないでさぁ。
八五郎:買わねえっつってんだろ! 凧屋 :へい いらっしゃい! 八五郎:いらっしゃいじゃねえよ。
金坊 :ええ~ 買ってよぉ。 凧屋 :そうですよ、買ってくださいよぉ。 八五郎:(凧屋に)
凧屋 :(金坊に)
金坊 :うん。でも お 凧屋 :じゃあね、いい方法 教えてあげよう。
八五郎:オイオイオイオイ!
金坊 :ありがと凧屋さん!
八五郎:待て待て待て待て!やめろ!
金坊 :ホント!?ありがと! 凧屋 :ありがとうございます! 八五郎:(凧屋に)
凧屋 :まぁまぁいいじゃないですか。
金坊 :これ!この いちばん おっきいのがいい! 八五郎:ぬぉ!待て待て!でかすぎるよ!
凧屋 :いえ、売りますよ? 八五郎:ええ!?売んの!? 凧屋 :ええ。6円50 八五郎:ろ、6円50 凧屋 :では、こちら お買い上げということで よろしいですね? 八五郎:いやいやいやいや!
金坊 :ん~ じゃあ普通のでいいよ。
八五郎:余計なこと言わなくていいんだよ。
凧屋 :へい、60 八五郎:けっこう しやがるねぇ……。
凧屋 :へいどうも、ありがとうございます! 八五郎:(ため息)まさか こんな 金坊 :元気出してよ お 八五郎:うるせえよ!誰のせいだと思ってんだ! 金坊 :それよりさ、せっかくだから、そこの広場みたいなとこで 凧あげしようよ! 八五郎:へいへい、分かったよ……。 金坊 :わーい!凧あげなんて初めてだぁ!
八五郎:よしよし。まず お 金坊 :うん。 八五郎:で、ちょっと離れて立って、お 金坊 :うん。 八五郎:で、お 金坊 :うん、分かった。 八五郎:よし、じゃあ 凧 持って 後ろへ下がれ。 金坊 :うん。(下がっていく) 八五郎:(下がっていく金坊を見ながら)
金坊 :はぁーい。(さらに下がっていく) 八五郎:もっと下がれー。 金坊 :はぁーい。(さらに下がる) 男1 :(金坊にぶつかられる)いでっ! 金坊 :あっ。 男1 :このガキ、どこに目ェ付けてんだ! 金坊 :ご、ごめんなさい!
八五郎:(2人のところへやってくる)
男1 :あぁん?てめえがオヤジか。
八五郎:へい、すみません……。 金坊 :お 八五郎:誰のせいだよ。ちゃんと周り見とけよ。
金坊 :うん、分かった。 八五郎:よし、じゃ待ってろ。
男2 :(八五郎にぶつかられる)いでっ! 八五郎:あっ!イテテテ…… 男2 :おうオッサン、どこに目ェ付けてんだ! 八五郎:あ、す、すみません! 金坊 :(2人のところへやってくる)
男2 :息子のほうが よっぽど しっかりしてるじゃねえか。
八五郎:はい……すみません……。 金坊 :お 八五郎:うるせえよ!
金坊 :元気出してよ お 八五郎:よぉーし、走れー!
金坊 :すごーい!あがったーっ! 八五郎:よぉーし、もっと高く あげてやるからな。それっ! 金坊 :うわぁー!高く あがっていくー! 八五郎:(楽しそう)
金坊 :すごーい!
八五郎:(楽しそう)
金坊 :そうなんだー!お 八五郎:(もう凧あげに夢中になってる)
金坊 :ちょっとぉ!
八五郎:(夢中)待てってんだよ!まだまだ高く あがるんだから! 金坊 :待てないよぉ!オイラに買ってくれたんでしょぉ?
八五郎:(夢中)うるせえなテメエは!今オレが やってんだろうが!
金坊 :いやガキの遊びでしょぉ……。
・
30代~40代くらい。
金坊の父親。
・金坊(セリフ数:92)
5~9歳くらい?
八五郎の息子。
おねだりをしては八五郎を困らせる。
こざかしい一面もある。
・女房(セリフ数:5)
30代~40代くらい。
八五郎の妻。
・
?歳。
横丁に住む男性。
人のいい おじさんという感じ。
・飴屋(セリフ数:8
)
?歳。
露店で飴を売っている人。
・団子屋(セリフ数:13
)
?歳。
露店で団子を売っている人。
・凧屋(セリフ数:11
)
?歳。
露店で凧を売っている人。
・男1(セリフ数:3
)
?歳。
凧あげ中の金坊にぶつかられる人。
・男2(セリフ数:3
)
?歳。
凧あげ中の八五郎にぶつかられる人。
・八五郎:♂
・金坊/女房:♀
・源兵衛/飴屋/団子屋/凧屋/男1/男2:♂
※配役はあくまでも推奨ですので、自由に変えていただいて構いません。
初天神(はつてんじん)
正月25日の、その年初めての天満宮の縁日。
天神様(てんじんさま)
菅原道真を祭神とする神社。天満宮。
はい、
いや、
今日は25日だからな。
じゃあさ、
今
もうすぐ帰って来ると思うからさ。
あいつなんかと一緒に行った日にゃあ、
あれ買ってくれだの これ買ってくれだの
うるさくてしょうがねえんだもん。
金坊が いたんじゃ ゆっくり
あのヤロウが帰って来ねえうちに 出掛けちまったほうがいいや。
じゃな、行って来るぜ!(と家を出る)
今の時期は
何 買わされるか 分かったもんじゃねえ。
(前から見覚えのある人が歩いて来る)
ん ―― ?前から歩いて来るのは ――
―― と、
で、ウチにも いただき物の ようかんがありましたんで、お返しがてら、
坊やを お宅まで送って行こうかと思いましてね。
別に、どこでもいいじゃねえか。
ははーん、よそ行きの
お
どこで覚えてくんだ そんな言葉!
天神様 行くんだよ!初天神だよ!
お
あれ買ってくれだの これ買ってくれだの言わないからさぁ、連れてってよォ。
フンだ!いいよーだ!
オイラ、おうちで
頭のいい お子さんですからねぇ。坊やの 話はおもしろいんですよ。
八五郎さん、私が 坊やの話相手になってあげますんで、
どうぞ ゆっくり初天神を楽しんで来てください。
適当に カカァに預けて 帰って下さって大丈夫ですんで。
そいじゃ、お言葉に甘えて、行かせてもらいまさぁ。
まぁでも
おかげで ゆっくり
(しばらく歩く)
お、ぼちぼち人が増えてきやがったな。
みんな天神様 行くんだろうなぁ。
ん?今 名前を呼ばれたような……
ハァ、ハァ。ああ どうも、八五郎さん。
―― と
やっぱり坊やも 一緒に 行かせてあげたほうが いいんじゃないかなぁと……
その ―― 、坊やの お話が ――
えー、ゆうべの話だそうで。
晩ご飯のあと、坊やが絵を描いて遊んでいると、
お母さんが しきりに、今夜はもう寝なさいと 言ってきたと。
坊やが「まだ眠くない」と言っても、「布団に入って 目をつぶってたら眠くなるから、
いいから布団に入って寝なさい」と言って聞かないと。
で、布団に入って しばらくすると、お父さんが酔って帰って来て、
「オウッ!おっかあ!子供は寝かせてあるだろうな!」って言うと、
お母さんが「シーッ!さっき寝かせたよ」って言ったと。
そしたら お父さんが 嬉しそうに
「ヒヒ、そうかぁ。じゃあ今夜は ゆっくり、デキルなぁ♥
おう おっかぁ、おめえも1杯やれよ」って言って お酒を
お母さんは「あらァ♥女房 酔わせて どうする気だい?」
なんて言って、まんざらでもない様子だったと。
で、またしばらくすると、2人で 布団のある部屋に入って来て、
お母さんが 妙に色っぽい声で
「あァん♥ホラぁ、おまえさんが お酒なんか飲ませるから、
心臓の辺りがドキドキしてきちゃったじゃないのォ♥」って言うと、
お父さんが 妙に
「し、心臓の辺りって、どの辺だい?お、この辺かい ―― ?」
なんて言いながら ――
とまあ、この辺りまで聞きまして。
ていうか おめえ あん時 起きてたのかよ!!
怒鳴りながら 鬼の
2人とも慌てて飛び出しまして……。
坊やは 外でもまだ続きを 話してくれそうになったんですが、
あまりにも、その、
これは 八五郎さんと一緒に 天神様へ行ってたほうが 良かろうということで、
追いかけて来たわけです。
いやもうホント色々と すみませんねぇ。
後はこっちで 預かりますんで。
申し訳ねえことでした。
では私はこれで。(去る)
どうも すいませんでした!
(金坊に)
バカヤロウ!よそ様に バカな話をしてんじゃねえよ!
(ため息)
しょうがねえなぁもぉ……。
オウ金坊、連れてってやるのはいいけどな、
お
(少しの間 2人無言で歩く)
ね~え、お
ああ、そうだな、お
ね~え、お
ああ、そうだな。あれ買って これ買ってって言ってないな。
ご
オイオイ 雲行きが怪しくなってきやがったなぁ。
ご
なんか買ってよ。
おめえなぁ、そういうこと言わねえって約束で 連れて来てやったんだろうが!
そんなこと言わないでさぁ……、なんか買ってよォ……。
じゃあ……
う……なんだよぉ……飴玉くらい いいじゃないかぁ……
(さらにぐずる)
ねぇ お
ねえ お
(さらにボリュームアップしてぐずる)
あめだま買ってよぉぉ!ねえ お父っつぁぁん!
ねえ あめだま買ってってばぁ!ねえ!あーめーだーま!
買ーって買って買って買って買って買って
周りが みんな こっち見てるじゃねえか!
分かったよ!もし近くに
だから静かにしろ!
ホント!?買ってくれるの!?
おめえ あらかじめ
(ため息)わがままボウズが……。
こんなヤツ連れて来るんじゃなかったぜ……。
(飴屋に)オウ 飴屋!
毎年ここに出してんスから。
オウ、飴玉1個 いくらだい?
まだ手が
お
(赤い色の飴を取って)
ホラ、これでいいだろ、口あけろ。
しょうがねぇなぁ、じゃ戻してと。
見ろ、指が飴でベチャベチャじゃねえか。ったく……
(人差し指と親指を 舐める)
ちゅぱ、ちゅぱ
ん~、じゃ この飴はどうだ?ホラ。
(飴を戻して指を舐める)
ちゅぱ、ちゅぱ
じゃ この飴は?
今 持ってる その飴、それ もう お客さんの飴ってことにしてください。
(金坊に)
しょうがねえや、この飴でガマンしろ。
(以下、子供の小さな口の中に大きな飴が入っていて しゃべりにくい感じ)
あ、おいひい。ちゅぱちゅぱ。
《あ、おいしい》
《うん、お
《それにしても、すごい人だね》
ちゃんと前見て歩け。
《まだまだ いっぱい お店も あるなぁ》
ホラ 水たまりもあるんだから、危ねえだろ?
おい金坊、前 見て歩けってんだよ。
オイ!前見て歩けってんだ、よ!<ペチッ>(と金坊の頭を叩く)
あ……
(泣き出す)
う……うわぁ~~ん!!
頭ぶったくらいで泣いてんじゃねえよ。
オイオイもったいねぇなぁ。
拾って洗えば また食えるだろ。
どのへんに落としたんだ?
おめぇ 調子に乗ってんじゃねえぞ。
何にも買わねえって言ったのに、飴玉 買ってやったんだぞ!
もうダメだよ!
ひどいよ……。
人がまだ楽しんでる飴玉 奪っといて……。
おだんごくらい いいじゃないかぁ。
ねえ おだんご買ってよぉ。ねえ おだんごぉ。
ねぇ おだんご買ってってばぁ。
買って買って買って買って買って買って
人でなし!鬼!悪魔!人さらい!
みなさーん!この人 人さらいですよー!!
(周りの人に)
いや、みなさん!違いますから!
父親ですから!ホントですって!
(金坊に)
おめえ何考えてんだよ!周囲に すげえ緊張感 走っちゃったじゃねえか!
バカなこと言ってんじゃねえよ!
だんご屋の前 通ったら買ってやるよ!
こんなとこで商売してんじゃねえよ!
毎年ここで やってんですから。
おかげで こっちは だんご買わされるんだ。
坊ちゃん、グッジョブ!
オウ、1本くれ。
(銭を出して)
ホラよ。
あんこと みたらし、どっちに しましょう?
みたらしなんざ、
カカァに どやされちまうぜ。
みたらしにしてくれ。
へい、みたらし お待ち。
お
このままじゃ
おめえの着物 汚して帰ったら、怒られるのは お
ちょっと待ってろ。
(だんごに付いてるみたらしのタレを舐め取る)
じゅるるるっちゅぱ
おお
ん~、まだけっこう たれてきそうだなぁ。
じゅるるるっちゅぱ
ん~、まだだな。
じゅるるるっちゅぱ
もうちょっとだな。
じゅるるるっちゅぱ ちゅぱ ちゅぱ ちゅぱ
ふう、こんなもんでいいだろ。
(金坊に差し出して)
ホラ。
ちゃんと
(だんご屋に)
オウ だんご屋、そこの
ああ、
(持ってるだんごをそこに漬ける)
よーいしょ。
何やってんですか!
やめてくださいよ 汚いなぁ!
(金坊にだんごを手渡す)
ホラ 金坊、だんごだ。
(蜜を舐める)
ちゅぱちゅぱ
あ、甘くておいしい!
ちゅぱちゅぱ
ちゅぱちゅぱ
ちゅぱちゅぱ
ちゅぱちゅぱ……
あ、
ええと、この
(持ってるだんごをそこに漬ける)
よーいしょ。
(八五郎親子に)
ちょっと おまえさんたち、もう どっか行ってください!
(ため息)ったく ワガママなヤロウだぜ……。おかげで えらい出費だぁ。
やっぱり おめえなんか連れて来るんじゃなかったぜ。
たかが飴玉1つと おだんご1つで、そんなに家計に響くの?
ホラもう満足したろ?
もうさっさと お参りして帰るぞ。
あ!お
ねぇ、
もう何にも買わねえよ!
オイラ凧あげ やってみたいんだよぉ!買ってよぉ!
買わねえっつってんだろ、客じゃねえよ。
うるせえよ!一緒になって言ってんじゃねえよ!
坊や、お父さんに、凧 買ってもらいたいよね?
ホラ、そこに大きな水たまりが できてるだろ?
そこにね、
「買ってー買ってー」って騒げば、お父さん きっと買ってくれるよ。
妙な
オイラさっそく やってみるね!
分かったよ!買ってやるから!
うるせえ!てめえが余計なこと言うからだろうが!
(金坊に)
さ、坊や、どの凧がいいかな?
これ
あのな金坊、これは売りもんじゃねえんだ、この店の看板だ。
(凧屋に)
な?このデカいの、これ看板だよな?
売りもんじゃねえよな?売らねえよな?
よろしくねえ よろしくねえ!
そんな金 ねえよ!
(金坊に)
おい金坊、さすがに このデケえのは無理だ。
こっちの普通のにしろ。な?いいだろ?
お
(凧屋に)
そういうわけだ。この普通の くれ。いくらだ?
しょうがねぇ……。
(銭を出して)
ホラよ。
ほんっとにワガママなガキだなぁ。
あ~あ、こんなことなら おめえなんか連れて来るんじゃなかったぜ……。
ねぇねぇ どうやるの どうやるの?
うまく あがったら おめえに糸 持たせてやるからな。
おめえは凧 持て。
こっちに向かって走れ。お
そしたら あがるから。分かったか?
もっと下がれー もっと下がれー。
お、お父っつぁ~ん!
どうも すいません。
あっし、この子の父親でして。
このたびは、ウチのボウズが迷惑かけまして……。
いい歳しやがって、ガキの面倒ぐらい ちゃんと見とけってんだ!
じゃ おめえは もう ここに立ってろ。
お
いいか?「走れ!」っつったら 走るんだぞ?
(走って5mほど下がる)
ふぅ、こんなもんでいいかな。
(金坊に)
よーし いくぞー!
走れーっ!(と言って自分も走り出す)
どうも すいません。オイラ、この男の息子です。
このたびは、ウチの父が ご迷惑を おかけしまして、誠に申し訳ありません。
(八五郎に)
おうオッサン、あんたも いい歳だろ?
ガキみてぇに はしゃぎ回って 人に迷惑かけてんじゃねえよ。
(ため息)
なんでオレが こんな目に
おめえのワガママのせいでよぉ……。
やっぱ おめえなんか連れて来るんじゃなかったぜ……。
気を取り直して、凧あげしよ!
(間)
よしっ、離せーっ!
(短い間)
おーっ!あがった あがったーっ!
そうだろぉ。
こうやってな、糸を うまく 引っ張ったり ゆるめたりしてやると、
どんどん高く あがっていくんだ。
お
当ったり前よ。お
ねえねえ!オイラにも糸 持たせてよ!
待て待て!こっからが難しいんだ!
糸の使い方を 間違えたら、凧が落ちちまうからな。
それっ!それっ!
凧が あがったら オイラに糸 持たせてくれるって言ったじゃないかー!
ねぇ貸してよー!
ねぇ貸してよ!貸してってばぁ!
凧あげはなぁ、ガキの遊びじゃねえんだよ!!
あ~あ、まったくワガママなんだからぁ……。
こんなことなら、お
おわり
春風亭一之輔
柳家小三治(10代目)
三遊亭円楽(6代目)
金原亭馬生(10代目)
柳家さん喬
柳家喬太郎
三遊亭遊雀
笑福亭仁鶴 ※上方落語
笑福亭松鶴(6代目) ※上方落語
露の五郎兵衛 ※上方落語
月亭文都 (7代目) ※上方落語