声劇台本 based on 落語 「
【注意】
声劇用に大きくアレンジしています。元の落語「牛ほめ」とはかなり違っています。
ですので、本式の落語用のテキストとしては向かないかと思います。ご注意ください。
アドリブ・口調変更・性別転換 等々OKです。
ご利用に際してのお願い等
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観覧自体が無料であればかまいません。いわゆる「投げ銭システム」に代表されるような、リスナーから
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<登場人物> <配役>
ここから本編
父親:(息子の与太郎を呼んでいる)
与太郎:(間の抜けた返事)んあー?
・
20歳。
いい歳をして商売もせず日々 遊び歩いているか家でゴロゴロしている。
怠け者で能天気で天然のバカ。
普段から 口は開きっぱなし。気の抜けた顔をしている。
20歳だが、精神年齢は もっと低そう、というか子どもっぽい。
こづかいがもらえるとなると やる気を出す。ゲンキンなやつ。
一人称は汎用性と普遍性を考えて「オイラ」にしていますが、何でもかまいません。
(実際の落語口演では「あたい」や「あたし」になることが多いです)
・父親(セリフ数:66)
?歳。 兄の佐兵衛より15歳 年下。
与太郎の父親。 佐兵衛の弟(15歳 下)。
職人ぽい口調だが、意外とものを知っている。
わが子のバカさ加減に手を焼いている。
・
?歳。 初老~老年。伴侶を「バアさん」と呼ぶ程度の年ごろ。
与太郎の父親の兄(15歳 上)。 与太郎の伯父。
与太郎の父親よりは 口調・人当たりが やわらかめ。
・与太郎:♂
・父親/佐兵衛:♂
【ちょっと難しい言葉】※クリックすると開いたり閉じたりします(ブラウザによっては機能しません)
家を建築したり修理したりすること。
物事の全体。
薩摩杉(屋久杉の異名)で できており、うずらの羽のような模様の木目をもつ木材。
備後(現在の広島県)で作られる畳。「五分縁」とは、畳の縁の布の幅が五分(約1.5センチ)の畳。
砂を加えて塗った壁。
隠元隆琦(いんげん りゅうき 1592-1673)のこと。
中国 明~清代の禅宗僧。江戸時代に来日し、日本黄檗宗(にほん おうばくしゅう)の祖となった。
画賛(がさん)とも。絵の上部や余白に書き加える文や句。
1661~1707。江戸時代の俳諧師。松尾芭蕉の弟子。
板材や角材などにするために原木を切ること。
日本全国にある神社。防火の神様が祀られていることが多い。
火災を防ぐこと。
菅原道真の愛牛の特徴。
角は天に向かい、目は地を睨み、身体は黒一色、頭は傾かず真っ直ぐ、耳は小さく、歯は乱杭歯(らんぐいば)。
『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』の「天拝山(てんぱいざん)の段」に出てくる文言。
歯が重なって生えており、歯並びが乱れていること。
845~903。平安時代の貴族。学問の神・天神様としてあがめられる。。
ネズミイルカ科スナメリ属に属する小型のイルカ。
イルカなどが水中で吐き出した泡がドーナツ状になったもの。
父親:「んあー?」じゃねえや。
ガキじゃ あるめえし、呼ばれたら「はい、何でしょう」ぐらいの返事 できねえのか。
ま、いいや。
ちょっと おめえに話が あるからな、 こっち来て 座れ。
与太郎:んー?
(父の前に座る)
おいしょ。座ったよ。
なーに?お
父親:(与太郎の阿呆ヅラにあきれている)
相変わらず 気の抜けた顔 してやがんなぁ、
ポカーッと
それが 人の話 聞こうってツラか?
口ぐらい 閉じろよ。
なんだって おめえ、いつも そうやって 口 開けてんだ。
与太郎:やだなあ、お
口 閉じたらさぁ、息が できねえじゃねえか。
父親:な、何 言ってんだ……?
まさか おめえ、普段 口でしか 息してねえのか……?
あのなぁ、息ぐらい、鼻で できるじゃねえか。
与太郎:え! 息って、鼻でも できるの?
父親:当たり前じゃねえか。
なんで知らねえんだよ。
与太郎:ちょっと待って、やってみる。
(鼻で吸う)スー……。
(鼻で吐く)スー……。
(もう一度)スー……スー……。
ホントだ……!
父親:(ため息)なんで こんな事から 教えなきゃならねえんだよ……。
あのなぁ
与太郎:当たり前だよ。
父親:バカは おめえだよ。
ハダシじゃねえよ、ハタチだよ。
誰が おめえの足の話なんか してんだ。
おめえの
与太郎:何 言ってんだよ お
オイラの
父親:だから、
与太郎:え?
じゃ
父親:なんでだよ。なんで そうなるんだよ。
与太郎:
じゃ
父親:ヨソジだよ。
与太郎:
父親:イソジ。
与太郎:うがい薬の?
父親:イソジンじゃねえよ。イソジ!
ついでに
与太郎:で、
父親:なんか
って んな事ァ どうでも いいんだよ。
おめえに付き合ってると 話が進まねえや。
あのな
ハタチと言やあ、普通は もう一人前だ。
なのに おめえと きたら、毎日毎日 ふらふら遊び歩いて、
そうでなきゃ
おまけに 常識すら
与太郎:そんなに
父親:誰も
んなこったから、近所の連中に バカだバカだって言われるんだ。
それだけじゃ
いや、
「
お
与太郎:でも おでこは広いよね。
父親:うるせえよ!余計な事 言わなくていいんだよ!
まあ とにかく、おめえの バカさ加減に みんな
与太郎:え、誰?
父親:誰じゃねえよ。知ってんだろ?
お
ほら、
おめえも たまに 遊びに行ってんだろ?
与太郎:ああ、
あの おじさん、オイラが遊びに行くと、
いっつも お茶と
そういやぁ
父親:コラコラ。「とかいう」とか 言うんじゃねえよ。
その
本心から心配してくれてよ、お
そのたびに こっちは気まずい思い してんだよ。
だがな、おめえも この お
やれば できる――はずだ、おそらく。
やる時はやる男――の はずだ、ひょっとしたら。
で、ここは ひとつ、おめえの そういう所を
安心させてやろうって
与太郎:いいけど――、どうやるの?
父親:うむ。実は
だからな、おめえ この
その
与太郎:え?
父親:そうだ。
与太郎:そんなの
父親:当たり前じゃねえか。
与太郎:そうかなあ。
まあ そこまで言うなら
じゃ
父親:(止める)待て待て。
え――? 行くって――、
何も 聞かねえで、おめえ、
与太郎:まあ それぐらいは?
普通に
父親:(感心)ほォ……。
能あるタカは なんとやら だな。
おめえが
(とはいえ不安)
だが……、一応、念のため、
お
どういう具合に
ここで やってみて くんねえか?
与太郎:今? お
まあ別に いいけど――。
じゃ いくよ。
(実演してみせる)
ああ
ヨッ、
父親:馬鹿野郎。
その
まったく……、少しでも おめえに期待した俺が バカだったよ……。
まあ とにかく、
というのも、
その
ガキの
その
この春にゃあ、めでたく子どもが産まれた ってんだな。
そこで
で、
このたび
お
だからな
与太郎:なぁんだ、
父親:そうだよ。できるか?
与太郎:簡単だよ。
立派な
父親:まぁ それでも
んなもん 子どもでも 言えるじゃねえか。
ここは、おめえも 一人前の 大人の社交が できるってとこを 見せてえ
もう ちょいと
なあに、
それ覚えて 言ってやってみろ。
与太郎:ええ~、なんか大変そうだなぁ。
父親:心配いらねえよ、そんなに難しいこっちゃ ねえんだ。
今から お
うまく やったら、
な?やってみろ。
与太郎:しょうがないなあ。
わかったよ、じゃ やるよ。
父親:よし。じゃあ 始めるぞ。
まずは――、
あ、そうだ。
与太郎:なに?
父親:
おめえ いつも、何も言わずに 勝手に上がり込むらしいじゃねえか。
いくら
親しき中にも 礼儀ありだ。
そしたら
そこで初めて 中へ入るんだ。いいな?
与太郎:うん。
父親:よし。
で、中へ入れてもらったら、さっそく
まずは、ざっと
「ほほお、
さ、言ってみろ。
与太郎:え? えーと――、
ほほお、うちは そぉたい、えのきづくりで ございますな……?
父親:エノキじゃねえよ、ヒノキだよ。
イヤだろ エノキで できた
いいか?
「
与太郎:ちょっと 何 言ってるか わからない。
父親:分からねえか?
「
だから「
そりゃあ金が掛かってる。
さ、まず こうやって全体を
そっから
次は こうだ。
「
与太郎:て、てんじょぉは、さつま
父親:食いもんじゃねえんだよ、腹でも減ってんのか。
これは
「
「
さて 次は こうだ。
「
与太郎:た、たたみは ビンゴの景品ですな……?
父親:どんなビンゴ大会だよ。
与太郎:ご、ごべ、ごぶ、ごぶべぶ……?
父親:まぁ分かんねえよなぁ……。
これは
おめえも
で、
黒っぽい布が 細く
その幅がな、普通の
これも
んで 次だ。
「
与太郎:さ、
父親:コラコラ!
おめえ それ 絶対 言うなよ!ブン殴られるぞ!
どう聞いたら アバズレになるんだよ。
与太郎:ひきずり?
父親:それも 「だらしねえ女」って意味じゃねえか!
おめえ
ていうか
さ、次は
「おや、
あれは
与太郎:と、とこのまに、なにやら
あれは、インゲン
父親:やっぱ おめえ 腹 減ってんな?
中国の絵の
まあ ちなみに、インゲン
だから インゲン
与太郎:インゲン
へえ~、そりゃ すごい お坊さんだったんだね。
父親:坊さんとしての すごさは そこじゃねえと思うけどな。
ま、いいや。続きだ。
「上に 誰やらの
与太郎:う、うえに、だれやら おっさんが 住みついておりますな。
父親:
だいたい
めちゃくちゃ
おっさんじゃなくて「
「
じゃ 続き いくぞ。
「『売る人も まだ 味 知らぬ 初なすび』」。
与太郎:う、うる……うる……
父親:『売る人も』。
与太郎:うる ひとも。
父親:『まだ 味 知らぬ』。
与太郎:まだ あじ しらぬ。
父親:『初なすび』。
与太郎:はつなすび。
父親:「これは たしか、
与太郎:こ、これは たしか、カキクケコでございましょう。
父親:カキクケコじゃねえよ、
さて、
ここまでは どうだ? 覚えたか?
与太郎:ん~、初めのほうが ちょっと。
父親:中ほどは?
与太郎:ぼんやりしてる。
父親:
与太郎:ちっとも わからない。
父親:全然ダメじゃねえか!
しょうがねえなあ。
じゃあ 一応、こっそり見れるように 紙に書いてやるよ。
おめえ、字ぐらい読めるよな?
与太郎:字ぐらい 読めらぁ。
父親:漢字は 分かるか?
与太郎:なにそれ、おいしいの?
父親:(ため息)
(書く)サラサラサラ……と。(書けた)ヨシ。
(紙を与太郎に手渡しながら)
ホラ、書いといてやったぞ。
言うこと 忘れたら、それ こっそり見て 言え。
堂々と見るんじゃねえぞ? いいか?
与太郎:わかった。
父親:これで
んで、この
与太郎:まだ なんか あんの!?
父親:(ニヤリと笑って)
実は ここからが
あのな、座敷の正面から 廊下を挟んで 向こうに 台所の 柱が見えるんだ。
もちろん台所も こだわって作ってて、その柱も たいそう立派なモンなんだが――、
柱が立派なだけに 目立つんだなぁ この穴が。
こないだ行った時 その穴のこと
で、そん時 お
いい知恵が 浮かんだんだけどよぉ、言わずに 帰って来たんだ。
こればっかりは、おめえに 言わせてやろうと思ってな。
与太郎:ええ~~、あれだけ
父親:ああ。
柱の穴を どうにかする名案を、おめえの口から 教えてやってみろ。
それだけじゃねえ。きっと、
与太郎:え!
父親:まあ、
与太郎:いくらぐらい くれるの?
父親:んなこと分からねえけど……
まぁ、1円ぐらいは くれるんじゃねえか?
そのくらいが
与太郎:(1円はなかなか大金)
1円! (喜ぶ)うはぁ~楽しみだなぁ。
(父に)
もし1円くれなかったら、お
父親:なんで俺が 立て替えなきゃならねえんだよ。
与太郎:ねえ早く なんて言うか おしえてよ。
父親:がっつくんじゃねえよ、今 教えてやるから。
あのな、座敷から 台所の柱の穴を 見つけるだろ?
で、
「
穴が隠れて、火の用心に なるでしょう」。
こう言ってやりゃあ、
与太郎:それ言えば
よぉし! えーと――、
(やけにスラスラと)
穴が隠れて、火の用心に なるでしょう。
父親:めちゃくちゃ
金が かかった
ゲンキンな
与太郎:
父親:知り合いじゃねえよ。人じゃねえよ。
そこに
台所は
穴を隠すには ピッタリってワケだ。
与太郎:なるほどぉ。
ねえ お
もっと ちょうだい、そういう、
父親:
こいつ、
じゃあ まぁ――、そうだなぁ……、
与太郎:牛を
そしたら
父親:まあ、自慢の牛だしなぁ。
くれるんじゃねえかなぁ。
与太郎:やったあ。
牛
父親:なんだよ おめえ、牛なんか
与太郎:
いくよ?
牛は
父親:そりゃ牛じゃなくて
なんだよ
牛ってのは こう
「
与太郎:なにそれ おまじない!?
父親:
これは、
ま、おめえには ちょいと難し過ぎたか。
与太郎:でも それ言ったら、
父親:まあ 牛への 最高の
これ言ってやりゃあ、喜んで
与太郎:くれるんだね?
よーし、いくよ。
てんかく ちがん、 いちこく ろくとう、 じしょう はちごう!
父親:言えんのかよ!
カネのためなら なんでも できんのかよ!
じゃ普通に 働けよ!
……まぁ いいや。
これで
じゃ 行って来い。
与太郎:わかった。じゃ 行ってくるね。
父親:ちゃんと
与太郎:わかってるよ。
じゃ、行ってきまーす。
与太郎:(独白)
あ~、なんだか妙なことに なっちゃったなぁ。
お
なんで そんな まわりくどい事 するかなあ。
それだったら、お
その
(佐兵衛さんの家に着く)
あ、
えーと、いきなり入っちゃ ダメなんだよな。
なんか言ってから 入るんだよな。
えーと、なんて言うんだっけ。えーと……
あ、思い出した。
(家の中へ向けて)
ごめんなさーい。
ごめんなさーい。
ゆるしてくださーい。
もう しませーん。
ごめんなさーい。
佐兵衛:(表戸を開けて)
どなたですかな、ウチの前で 謝ってらっしゃるのは。
(与太郎だ)
おや、誰かと 思ったら
与太郎:あ、
ごめんなさーい。
佐兵衛:ど、どうしたんだ?
何か あったのか?
与太郎:お
佐兵衛:
じゃ「ごめんなさい」じゃなくて、
「ごめんください」じゃないか……?
与太郎:あ、それだ。
ごめんくださーい。
佐兵衛:しきりに謝るから、何か やらかしたのかと思ったよ。
しかしまぁ、あの
いや 感心感心。さ、上がんなさい。
与太郎:はーい。
佐兵衛:で?今日は なにか用が あって 来たのかな?
与太郎:今日は、
佐兵衛:
たんと
与太郎:えーと まずは……、
ほほぉ、うちは そぉたい、ひの――(ど忘れ)
えー、ひの―― ひの――、
火の車で ございますな。
佐兵衛:ちょちょちょちょ。
いや まぁ、たしかに 安くはない
家計に余裕がある
でも火の車ってほどじゃないよ。
それを言うなら、「
与太郎:あ そっか。ひのきづくりで ございますな。
えー、
佐兵衛:腹が 減ってるのかい?
それは「
与太郎:あ そっか。さつまの うずらもくで ございますな。
えー、たたみは 貧乏でボロボロですな。
佐兵衛:いやいや 新しいから!キレイだから!
それを言うなら、「
与太郎:あ そっか。ビンゴの ゴブベリで ございますな。
えー、
佐兵衛:
一応 ヒトなんだけど。
与太郎:でも しょっちゅう バブルリング 作ってるじゃない。
佐兵衛:あれは タバコの煙を
それを言うなら、「
与太郎:あ そっか。
えー、
佐兵衛:バケモノ!?どこに!?
……なんにも いないじゃないか。
あれは バケモノじゃなくて 「
与太郎:あ そっか。かけものが 出ておりますな。
あれは、
佐兵衛:だからバケモノじゃないから!
ていうか 何だい そのバケモノは。
それを言うなら、「
与太郎:上で 誰やらが
佐兵衛:誰!? ウチには
ウチは
バアさんとも もう何年も ご
ていうか ウチ
それを言うなら、「上に 誰やらの
与太郎:そうそう、それそれ。
(独白)
で、えーと、次 なんだっけ。
あー なんか、ややこしいやつだよな。
ちょっと紙 見るか……。
(佐兵衛に)
佐兵衛:え? むこう?
(むこうを向く)
こうかい?
与太郎:そうそう。
あ、オイラが「いい」って言うまで ゼッタイこっち見ちゃダメだよ?
もし こっち見たら、目の中に 指 つっこんで
佐兵衛:こわいよ!ペナルティが えぐすぎるよ!
見ない!見ないから!
与太郎:じゃ いくよ。
(紙を見ながら)
えーと……、
(平仮名だらけで読みにくい)
んん……? えーと……、
(めちゃくちゃ たどたどしく)
う……、う……、うる……、うるひ、と……もま……もまだ……もまだあ……、
じし、じし……、ら、らぬは……、つな……、すび、すびこ……れはた、れはたし……、
かきか……くのく……でせう。
佐兵衛:おまえさん なんか読んでるのかい?
与太郎:べ、別にぃ。
(紙をフトコロに しまって)
もう こっち見ていいよ。
佐兵衛:そうかい?
(向き直って)
ふう、目玉
いや しかし、なんにしても、よく
ありがと ありがと。
与太郎:(戸の向こうを見て)
佐兵衛:(あまり触れてほしくないところ)
ん? ああ、まあ……台所の柱だな。
与太郎:おっきな穴が あいてるねえ!
佐兵衛:(ため息)やっぱり 気付いちゃうか……。
そうなんだよ。
あんな 大きな
他の 作りが いいだけに、どうにも目立つもんでねぇ、
弱っちゃってるんだ。
与太郎:
佐兵衛:ああ、気になるねえ。
与太郎:
穴が隠れて、火の用心に なるでしょう。
佐兵衛:(名案だ。目からウロコ)
おお……! おお、そりゃ名案だ……!
台所は
穴を隠すには もってこいだ! なるほど その手が あったか――!
いやぁ
おまえさんの おかげで、気になってた穴が キレイに隠せるよ!
ありがと ありがと!
与太郎:(
(
(でも
あれ……?
佐兵衛:どうした?
与太郎:
佐兵衛:ああ、感心したとも。
与太郎:
佐兵衛:ああ、喜んでるとも。
与太郎:……。
じゃあさあ、その気持ちを、
カタチにしたり、してみたら、
どうかなあって……。
佐兵衛:カタチに……?
与太郎:だからさぁ……、
(ものをもらう形に手を出して)
出すモン 出せ。
佐兵衛:な、なんだよ、
出すモン――?
(与太郎の言わんとしていることに気付く)
ああ――ハッハッハ、なんだ、
いや こりゃ
そりゃそうだよな、あんな いい知恵 貸してくれたんだからな。
よしよし、
(与太郎の手に硬貨を置いて)
ホラ。
与太郎:(手の上の硬貨を見て)
これ――なに――?
佐兵衛:何って、50
与太郎:50
佐兵衛:
まあ いいや、おまえさんには感謝してるからな、
(さらに追加で硬貨を渡して)
ホラ、これで1円だ。
与太郎:おおー! これで
佐兵衛:誰が そんな
与太郎:じゃ 牛も
佐兵衛:なんだい、牛も
与太郎:うん。そう思って さっきから探してんだけど、
牛、いないね。
佐兵衛:部屋の中に 牛がいる
牛は 裏庭に いるよ。
与太郎:あ そうなんだ。
じゃ 裏庭 いこうよ。
佐兵衛:ああ、じゃ ついておいで。
佐兵衛:さ、ここが裏庭だ。
あそこに いるのが
あんまり 近づくと 危ないから、この辺りから 見ておくれ。
ふーむ、むこうを 向いてしまってるな。
まぁ 牛なんてのは
まあ
与太郎:えーと、あの牛は、
てんかく ちがん、
いちこく ろくとう、
じしょう はちごう ですな!
佐兵衛:(驚嘆)おお――!
それは、
すごいな
――ただ まぁ、牛は むこう 向いてるから、
与太郎:(牛の尻に注目している)
あれ――?
ねえ
しっぽの下に、
佐兵衛:おいおい、何が
ありゃ ただの
与太郎:
佐兵衛:別に 気にならないよ。
与太郎:
佐兵衛:いや だから 気にしちゃ いないんだよ。
与太郎:
佐兵衛:牛の
与太郎:穴が隠れて、
※「火の用心」と掛けた洒落。
その他の台本
林家たい平
三遊亭楽生
柳家一琴
柳家さん光
金原亭馬治
春風亭柳好(4代目)
立川談吉
三遊亭栄楽
桂歌蔵